2016 Fiscal Year Research-status Report
対称空間上のシュレディンガー方程式の幾何解析的構造の解明とその応用
Project/Area Number |
26400116
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
筧 知之 筑波大学, 数理物質系, 教授 (70231248)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田村 英男 岡山大学, 自然科学研究科, 特命教授 (30022734)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 平均値作用素 / 対称空間 / 反応拡散系 / 時間大域解 / 爆発解 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、2つの研究テーマに注力し、それぞれのテーマに関して論文を発表した。詳細は以下の通りである。 1.非コンパクト対称空間上の平均値作用素の全射性について。平均値作用素は、ソナー変換との関係しており、逆問題や微分方程式、トモグラフィーなどで重要な役割を演ずる重要な作用素である。にも拘らず、その基本的な性質は詳しくは判っていない。本研究では、以下の設定で研究を行った。X=G/Kを非コンパクト対称空間とし、正の数rを固定する。そして、X上の滑らかな関数f(x)をx中心、半径rの測地球上で積分し平均を取るという、平均値作用素をMとする。Mは、X上の滑らかな関数の空間からそれ自身への連続線形作用素になる。この設定のもとで、かつ、幾つかの条件下で、Mが全射となることを示した。特に階数1の非コンパクト対称空間の場合、無条件に全射になる。この研究は、フルトン・ゴンザレス教授(アメリカ、タフツ大)、イエンス・クリステンセン教授(アメリカ、コルゲート大)との共同研究であり、論文はJournal of Functional Analysisから出版された。 2.反応拡散系の解の爆発と時間大域解について。対称空間上の非線形シュレディンガー方程式の研究を行う準備として、本研究ではユークリッド空間上のfractional Laplacianに対する非線形反応拡散系を扱った。fractional Laplacianの指数が小さい場合、拡散効果は弱くなり解の爆発が起こりやすくなる、と予想していたが、予想と異なり、逆に爆発が起こりにくくなることが判明した。また、時間大域解の存在条件と爆発条件をoptimalな形で与えた。この研究は、大下承民准教授(岡山大)と共同で行い、論文をMathematical Journal of Okayama University に発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である対称空間上のシュレディンガー方程式の時間大域解の構成とその幾何解析的性質の解明のために、本研究者が設定した幾つかの目標が十分満足のいく形で解決された。特に、上記で述べた平均値作用素の全射性に関する結果は、当初の予想以上の重要な成果である。一方で、本研究の研究代表者は所属大学を異動しており、そのために、研究の進展に若干の遅れが生じたことは否めない。実際、平成28年度は本研究の最終年度であり、研究集会を開催し成果を発表する予定であったが、断念せざるを得なかった。そして、計画を1年延長せざるを得なかった。ただし、平成28年度を4年計画の3年目と考え直すのであれば、これらを総合的に判断して、おおむね順調に進展していると判断している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本来の計画では平成28年度が最終年度のはずであったが、研究期間を延長したために平成29年度が最終年度となる。そこで、平成28年度の予定していた研究計画を平成29年度に行うことにする。また、そのために、研究集会やセミナーを開催し、得られた研究成果を公表していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
本研究の研究代表者が平成28年度12月1日に岡山大学から筑波大学へ異動となり、そのために研究計画の大幅な見直しを余儀なくされたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本来平成28年度に行う研究計画を平成29年度に行う予定である。具体的には、次年度に繰り越した研究費を研究集会開催および成果発表、そしてそのための国内旅費および外国旅費に充てる。また、研究発表および論文執筆用にコンピューターおよび関連する備品を購入する。
|