2016 Fiscal Year Research-status Report
行列係数を持つ微分作用素の作用素解析とスペクトル解析
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26400117
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
廣川 真男 広島大学, 工学研究院, 教授 (70282788)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ラビ模型 / 量子相転移 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は,非可換調和振動子の模型の一つとみなせる量子Rabi模型の持つ量子相転移の可能性を探った。平成27年度に見つけた量子相転移の兆候は,クロスオーバーである可能性も今年度の研究でみえて来た。平成29度にどちらなのかを決定する目処を付けたい。 結合定数がゼロの場合,量子Rabi模型はN=2超対称量子力学を記述する数理模型となっているが,結合定数を大きくした極限では,元の超対称性が自発的に破れる数理模型となっていることを前年度までに証明していた。ただし,この収束はハミルトニアンに対する弱レゾルベント収束の意味であった。そこで今年度,この収束の位相を強くできるかを課題としたが,ノルム・レゾルベントの意味で収束することが証明できた。これにより,結合定数を大きくして行ったとき,固有エネルギーやその固有状態の挙動も理解できるようになった。この定理を用いると,結合定数が大きいとき,量子Rabi模型の基底状態はコヒーレント状態によるシュレディンガーの猫状態となることを証明した。この事実は,吉原らの実験により確認されている[Nature Phys, vol.13,44-47 (2017)]。また,上述の超対称性の自発的破れはスピン・カイラル性によるものであり,これを担うのが量子Rabi模型の相互作用の中の対向回転項であることを前年度までに明らかにしていたが,これらの対向回転項がスピン・カイラルの世界から仮想光子を基底状態にもたらし,コヒーレント状態を作り出していることが今年度示せた。平成29年度はこれを調べるための作用素解析の手法を研究する。 1つの接合部に2本の細線が繋がった量子情報デバイスの数理モデルに対し,接合として実際に使える量子ドットの候補が実験的に見え始めているので,この実験的設定を数理模型に取り入れることを平成29年度は行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
年度当初に挙げた課題が解決され,実際にそれを示す実験結果も出始めたから。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度示したコヒーレント状態によるシュレディンガーの猫状態は,量子Rabi模型というパリティ対称性を持つ模型であったが,これにバイアス・エネルギーを加え,パリティ対称性が崩した一般化された量子Rabi模型に対し,パリティ対称性を失うことがどのようにコヒーレンスに影響するのかを調べる作用素解析学を考える。
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Causes of Carryover |
予定した研究打合せのための国内出張が一つ年度末にキャンセルになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
できなかった出張を行い,平成29年度研究実行のための研究打合せを行う。
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Research Products
(4 results)