2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400120
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
幸崎 秀樹 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (20186612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
綿谷 安男 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (00175077)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 作用素平均 / ノルム不等式 / 正定値関数 |
Outline of Annual Research Achievements |
東北大学の日合文雄氏(現名誉教授)と研究代表者は共同研究を行い、約10年程前作用素平均とそのノルム不等式に関する一般論を構築した。この理論においては、各種平均の比から自然に決まる関数の正定値性が極めて重要である。正定値性判定のための常套手段はBochnerの定理である。つまり、Fourier変換を計算し、その正値性を判定すれば良い。
しかしながら実際には、Fourier変換の計算が不可能な重要な具体例も多く、正定値性のチェックの為には様々な工夫が必要となってくる。その典型的なもの(一つ)はStolarsky平均と関係するものである。正定値性より更に強い性質である強い無限分解可能性を示すことにより、この問題を解決し論文として発表した。ここで用いられた手法は、比として現れる関数のLevy-Khintchine表示であり、この表示に現れる測度を具体的に計算することにより、無限分解可能性を示す事ができた。Stolarsky平均(族)はパラメータを含む系列であり、パラメータを選ぶことにより、多くの典型的平均がカバーされる。従って、これはかなり適用範囲の広い結果であり、様々な応用があるものと期待される。
一方、研究分担者綿谷氏は従来から行っている力学系から自然に生じる作用素環の研究を更に進展させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
作用素平均に対するノルム不等式の研究に必要な各種関数の正定値性・無限分解可能性に関する結果を地道に蓄積している点はある程度満足がいく。不満足な点も多々あるが数学の研究とはそんなものであり、一方において「研究実績の概要」で触れたStolarsky平均に対する結果は、分野の初期段階からの懸案事項だった作用素binomial平均のノルムの単調性を特別な場合として含んでいる。その意味では満足のできる成果であり、全体としては「おおむね順調」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 作用素平均に対するノルム不等式の研究に必要な各種関数の正定値性・無限分解可能性に関する判定結果を蓄積する。その為に、従来通り大量のFourier変換の計算を実行するとともに、Stolarsky平均に対する研究でも役立ったLevy-Khintchine表示利用の更なる可能性について探る。
2. Stolarsky平均(族)は量子情報理論でもしばしば登場する。「研究実績の概要」でも触れたように、この平均族に対する新たな知見を得たので、本研究の量子情報理論への応用の可能性について探る。
3. 作用素平均の研究と並んでもう一つの大きな研究目標である非有界作用素に対する並列和の理論及びその絶対連続性の研究に対する応用についての研究であった。その第一歩として、出発点となる並列和理論の一般論に関する論文の準備にとりかかる。
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Causes of Carryover |
年度末近くに出張を一件予定していたが、この時期に検査入院をした為、翌年度使用とすることにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
未使用額が14万円程度と比較的小額な為、次年度に研究討論の為の旅費を多少増やす(研究代表者自身または招聘)ことにする予定である。
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