2014 Fiscal Year Research-status Report
多次元予測理論的新手法の展開とファイナンスにおける動的従属性解析手法の開発
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26400139
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50168431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 雪夫 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10399793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 非マルコフ・モデル / 短期金利モデル / 予測理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者等により発展させられてきた予測理論的な手法の応用として,伊藤の確率解析を非マルコフの設定で用いるための一つの枠組みが得られている.森内慎吾・仲村勇祐 両氏との共同研究において,この枠組みを土台にした新しい短期金利モデルを導入したところ,事前の予想以上に良い性質を持つことが分かった.その良い性質とは,次の3つである: (1) 債券価格に対する具体的な表現が得られる. (2) 米国債等の現実のイールド曲線へのフィッティングの結果が非常に良い. (3) この短期金利モデル自体は非マルコフであるが,別の伊藤過程と組み合わせることで2次元マルコフ過程を得ることができる.それにより,派生証券の価格の計算に関して,偏微分方程式の有限差分法等の通常の数値計算法を適用できるようになる. この結果については,論文にして投稿するとともに,国内の学会やシンポジウムにおける講演において発表を行った. 研究分担者の笠原雪夫氏およびMohsen Pourahmadi氏との共同研究により,予測理論的手法を適用する際に現れる完全非決定性の多次元の場合のスペクトル領域での特徴付けに関して,これまでよりも完全な結果が得られた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者等により発展させられてきた予測理論的な手法の応用として想定以上の結果が得られた.すなわち,伊藤の確率解析を非マルコフの設定で用いる独自の枠組みを土台にして新しい短期金利モデルを導入したところ,種々の良い性質を持つことが分かった.以前に研究を行っていた株価のモデルでは,物理測度の下で記憶の効果を持つモデルを導入しても,同値マルチンゲール測度の下ではそれが消えてしまうという現象が起こってしまった.ところが今回研究を行った金利モデルでは,債券価格の明示的な表現が得られるなどの既成のモデルと共通の良い性質を持ちながら,これまでと本質的に異なる新しいモデルを得ることができた.さらに,非マルコフ金利モデルの欠点と言われる,派生証券等の数値計算が困難になるなどの問題点も,我々が導入したモデルでは2次元マルコフ過程への埋め込みを通じて,回避し得るという興味深い事実も示すことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
予測理論的手法の応用として得られる伊藤の確率解析を非マルコフの設定で用いる枠組みと金利モデルの相性がよいことが分かったので,これを種々の方向に発展させる. 研究分担者の笠原雪夫氏とともに,予測理論的な手法を連続時間の場合の多次元へ拡張する研究を進める. 予測理論的な手法に関し,多次元の離散時間過程の場合に笠原雪夫氏やMohsen Pourahmadi氏との共同研究で得られている種々の結果を,さらに様々な方向に発展させる.
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Causes of Carryover |
予測理論的手法の応用として得られる確率解析を非マルコフの設定の設定で行う枠組みのファイナンスへの応用や、多次元離散時間の場合の完全非決定性のスペクトル領域での特徴付けに関して、当初の想定以上の結果が出始めたので、その影響のおよぶ範囲を見極めることが重要となり、研究打ち合わせや研究発表の計画を変更する必要がでてきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
確率解析を非マルコフの設定の設定で行う枠組みのファイナンスへの応用や、多次元離散時間の場合の完全非決定性のスペクトル領域での特徴付けに関して、研究打ち合わせやシンポジウムでの研究発表の計画を変更して、次年度の経費にもその未使用額を充てることにした。
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