2015 Fiscal Year Research-status Report
多次元予測理論的新手法の展開とファイナンスにおける動的従属性解析手法の開発
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26400139
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (50168431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 雪夫 北海道大学, 理学(系)研究科(研究院), 非常勤講師 (10399793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | Baxterの不等式 / 短期金利モデル / 予測理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者の井上等により過去20年近く発展させられてきた確率過程に対する予測理論的手法は、最近の研究代表者および笠原雪夫氏・Mohsen Pourahmadi氏との共同研究による一連の成果 ([Proc. Amer. Math. Soc. 144 (2016), 1779-1786], [Integr. Equ. Oper. Theory 84 (2016), 289-300] および投稿中の論文一つ) により、新たな発展の段階に入ったといえる。この井上・笠原・Pourahmadiの研究は、それまで1次元過程に限定されていた結果を多次元過程へと拡張するという問題の解決のために行われたものであるが、結果として、いくつかの新しい手法の開発を導くことになり、それがさらに次の理論の発展へとつながることが見えてきたというのが、2015年度の研究の大まかな内容である。具体的には、次の2つの成果が挙げられる: (1) 記憶を持つ多次元連続時間過程の確率解析への応用 (井上昭彦・笠原雪夫・仲村勇祐)。井上・笠原・Pourahmadiの研究は、多次元離散時間定常過程を対象として行われた。しかし、以前の1次元過程に対する研究での類推から、そのような多次元での最も単純な設定で開発された手法は、記憶を持つ多次元連続時間過程の確率解析にも自然に適用されることが、期待されていた。2015年度の研究では、その方向での最初の成果が得られた。また、1次元連続過程でも、新しい成果が得られた。 (2) 時系列に対する新しいブートストラップ法の開発 (井上昭彦・清水亮・笠原雪夫)。井上・笠原・Pourahmadiの研究に現れた手法を応用することで、時系列に対する新しいブートストラップ法の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究代表者等により発展させられてきた予測理論的な手法に対して、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックは、着々と新しい成果を生み始めている。それらの中には、おおまかには計画段階で想定していたものもあるが、むしろ、新しく導入されたアイデアの方に、より大きな価値があると思われるものがある。具体的には以下の通りである: (1) 記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用 (井上昭彦・笠原雪夫・仲村勇祐)。この研究で最初に鍵となるのは、新生過程をブラウン運動による確率積分で表現するときの積分核の明示表現を導くことである。以前の1次元の最も簡単な確率過程に対する研究では、ヴォルテラ型積分方程式を具体的に解くことで必要な積分核を求めていた。しかし、1次元でもより複雑は過程や、多次元過程になると、同じ手法で導くのは困難である。この問題点に対し、積分核を導く全く新しい手法を発見した。 (2) 時系列に対する新しいブートストラップの開発 (井上昭彦・清水亮・笠原雪夫)。これは、計画段階では想定していなかった方向の応用である。
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Strategy for Future Research Activity |
上の進捗状況で述べたように、現在は、井上・笠原・Pourahmadiによる一連の研究成果と想定外の新しいアイデアとを組み合わせて、大きな進展が期待される状況であり、これをさらに着実に進めていく。具体的には、以下の通りである: (1) 記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用 。1次元でより複雑は過程に応用する研究 (仲村勇祐氏との共同研究) では、ほぼ見通しがついてきた理論の基礎の確立を進めるとともに、それを短期金利モデルへ応用する研究を進める。多次元過程に対する応用では、極めて興味深く重要と思われる現象が観察されたので、それに対する解析を進める。 (2) 時系列に対する新しいブートストラップの開発 (井上昭彦・清水亮・笠原雪夫)。これについては、ほぼ見通しがついてきた理論の基礎の確立を進めるとともに、他のブートストラップ法との比較の研究を行う。
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Causes of Carryover |
研究代表者等により発展させられてきた予測理論的な手法に対して、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックを応用しようとする段階にあったが、さらに新しいいくつかのアイデアが加わることになった。そのため、記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用や、時系列に対する新しいブートストラップの開発に関して、当初の設定以上の結果が出始めたので、その影響のおよぶ範囲を見極め、理論の基礎を確立することが重要となり、研究打ち合わせや研究発表の計画を変更する必要がでてきた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
確率過程に対する予測理論的手法に関し、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックに加え、さらに新しいいくつかのアイデアが加わったので、記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用や時系列に対する新しいブートストラップの開発に関する研究打ち合わせやシンポジウムでの研究発表のために、研究計画を変更して、次年度の経費にもその未使用額を充てることにする。
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