2016 Fiscal Year Research-status Report
多次元予測理論的新手法の展開とファイナンスにおける動的従属性解析手法の開発
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26400139
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 昭彦 広島大学, 理学研究科, 教授 (50168431)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笠原 雪夫 北海道大学, 理学研究院, 研究員 (10399793)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 予測理論 / 直交多項式 / 偏相関関数 / Verblunsky 係数 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 記憶を持つ連続時間過程の確率解析 (井上昭彦・仲村勇祐)。記憶を持つ連続時間過程に対し予測理論的手法を適用する際の鍵となるのは、イノベーション過程による明示的なセミマルチンゲール表現の導出である。2006年の井上-中野-Anh の論文では、非常に特別な場合に実際にその導出を行っているが、その方法はその特別な場合の特殊性に大きく依存しており、井上と大学院生の仲村氏は様々な試行錯誤の結果、結局、それを一般の場合にそのまま拡張することは不可能であるという結論に達した。しかし幸いなことに、2006年の上記の論文とは全く異なる、上記のセミマルチンゲール表現を直接的に求める方法が井上により発見された。その方向で、井上・仲村で研究を進めたところ、今度は仲村氏により、非常に重要な発見が成された。すなわち、考えているクラスの記憶を持つ連続時間過程の有限予測子は、無限級数を含まない有限サイズの行列による明示的な表現を持つという発見である。これは井上も全く予想していなかった発見であった。以上の研究は、1次元過程を対象にしていたが、容易に多次元に拡張することができるので、一気に多次元の場合を含む広いクラスの連続時間過程に対する研究の見通しをたてることができるようになった。 (2) 離散時間の場合 (井上昭彦・笠原雪夫)。事情により、仲村氏がもはや研究を続けることができなくなってしまった数か月後、井上は突然、仲村氏の計算と同様のことを離散時間で行えば、それまで知られていなかったが、誰にもその意義が直ちに分かる、非常によい結果が得られることに気づいた。同時に、仲村氏の発見の真の重要性が明らかになった。井上は笠原氏にこのアイデアを発展させる研究を提案し、現在、この研究は進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、研究代表者の井上等により発展させられてきた予測理論的手法を、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックによりさらに発展させようというものであるが、ごく最近は、むしろ、思いがけなく発見された大きな3つのアイデアにより、研究が大きく進展している状況である。具体的には以下の通りである: (1) 記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用。思いがけなく発見された大きな二つのアイデアとして、イノベーション過程による明示的なセミマルチンゲール表現を求めるための新しい手法と、あるクラスの記憶を持つ連続時間過程の有限予測子は無限級数を含まない有限サイズの行列による明示的な表現を持つという発見がある。これらにより研究の見通しはほぼついたといえる。 (2) (1) の後者の発見を離散時間に適用すると、非常によい新しい結果が得られるというのが3つ目の大きなアイデアである。これは、計画段階では想定していなかった方向の研究である。 (3) 時系列に対する新しいブートストラップの開発。これは、理論的にはほぼできている。必要な数値計算は、これからである。
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Strategy for Future Research Activity |
上の進捗状況で述べたように、現在は最近の大きな3つのアイデアの発見により研究が大きく進展したので、論文として完成させる作業をさらに着実に進めていく。具体的には、以下の通りである: (1) 記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用 。思いがけなく発見された大きな二つのアイデアにより、研究の見通しはほぼついたので、論文としてまとめる作業を進める。 (2) 離散時間の場合。これも研究の見通しがついているので、論文としてまとめる作業を進める。 (2) 時系列に対する新しいブートストラップの開発。これについては、理論は確立されているので、必要な数値計算を行い、論文として完成させる。
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Causes of Carryover |
本研究では、研究代表者の井上等により発展させられてきた予測理論的な手法を、井上・笠原・Pourahmadiの最近の一連の研究により導入された新しいテクニックを応用してさらに発展させようというのが当初の研究計画であった。しかし、新しいいくつかのアイデアが次々と加わってきているため、最初の想定した研究計画では合わなくなってきている。新しいアイデアをもとにしたいくつかの論文を完成させるのに必要な研究打ち合わせと、その研究発表のために、平成28年度の計画を見直すことが必要になった。離散時間の場合の新しい研究が代表的なものである。こうして平成28年度の計画を見直した結果、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究が目的とする確率過程に対する予測理論的手法に関し、新しいいくつかのアイデアが加わったので、離散時間の場合の明示表現の結果や、記憶を持つ連続時間過程の確率解析への応用、さらに時系列に対するブートストラップの研究打ち合わせやシンポジウムでの研究発表のために、研究計画を変更して、次年度の経費にもその未使用額を充てることにする。
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