2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400145
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
中野 史彦 学習院大学, 理学部, 教授 (10291246)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガウシアンβアンサンブル / 準位統計 / 1次元拡散過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) β アンサンブルの準位統計: Trinh Kahn Duy 氏(九州大学)との共同研究。サイズ n のガウシアンβアンサンブルにおいて、n ・β = c を満たしながら n が発散すると同時にβが0に収束するときの bulk scaling limit がポアソン過程であることを示した。intensity measure の同定が問題解決の重要点であるが、これはDuy氏によって得られた、あるジャコビ行列のスペクトル測度に一致する。このこととサウレスの公式とを組み合わせると、興味深い関係式が得られる。証明は対応するジャコビ行列の固有関数がアンダーソン局在することを示し、ランダム作用素の手法を用いることによって行われる。 (2) 局所マルチンゲールがマルチンゲールになるための条件: 清水佑樹氏(修士課程学生)との共同研究。1次元拡散過程は適当なスケーリングの元で局所マルチンゲールになるが、これがマルチンゲールになるための特徴付けを与えた。このことの確率論的証明が知られているが、難解である。ここでは、微分方程式の手法を用いたより平易な別証明を与えた。 (3) Bessel like diffusion の推移確率の漸近挙動: 清水佑樹氏(修士課程学生)との共同研究。笠原勇二氏(筑波大学)の助言を数多く頂いた。ドリフトが0次ベッセル過程のそれに漸近するような確率過程を考え、その推移確率の時間無限大での漸近挙動を調べた。対数オーダーで減少するような確率過程の例、またいくらでも遅いオーダーで減少するような確率過程を構成できる。手法は笠原ー小谷による、dual system の漸近挙動の結果にタウバー型定理を適用することによって行われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究課題の主目的は次の3つである。 (1) 空間変数のα乗で減衰するランダムポテンシャルを持つ1次元シュレディンガー作用素の(バルクでの)局所的及び大域的ゆらぎ (2) 様々な系への拡張。関連する話題 (3) edge scaling limit それぞれの進捗状況 (1) 局所的ゆらぎは、α>1/2, =1/2, <1/2のときにそれぞれクロック過程、Sineβ過程、ポアソン過程に収束すること、大域的ゆらぎは、適当なスケーリングの元でガウス過程に収束することを示した。 (2) ポテンシャルの結合定数がサイズのα乗で減衰するようなモデルで(1)に対応する結果を得た。また、より一般的なランダムポテンシャルでα>1/2のときの局所的ゆらぎのクロック過程への収束、ガウシアンβアンサンブルでの局所的ゆらぎのポアソン過程への収束を示した。また、1次元拡散過程のマルチンゲール性とベッセル型拡散過程の推移確率の挙動についての研究を行った。 (3) 問題点や解決に向けてのアイデアを共同研究者と交換し、資料の収集を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は以下の課題に取り組む (1) ガウシアンβアンサンブルにおける、大域的揺らぎ:対応するジャコビ行列の固有値方程式を考察し、それをマルコフ連鎖と見なすことで、マルチンゲールCLT定理を適用することにより証明する。 (2) 「研究実績の概要」(1) において c = ∞ の場合:まずは、より平易な問題である decaying coupling constant model において類似の問題を考察する。おそらくアンダーソン局在が起こると推測されるが、通常の場合と比べ証明は困難である。この問題が解決すれば、本来の問題である c = ∞ の場合の証明は可能と期待される。 (3) edge scaling limit の予備的考察:ランダムシュレディンガー作用素の固有値の edge scaling limit の研究は殆どない。確率解析の手法(Allez-Dumaz のTracy-Widom 分布の極限についての論文を参考にする)と、ランダム作用素の手法(状態密度のリフシッツテイル挙動とアンダーソン局在の評価をより精密に行う)の2つを検討する。
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Causes of Carryover |
2016年度は、(1)学習院大学理学部数学科主任を務めたので、海外出張を控えざるを得なかったことと、(2)家族の急病により、出張をキャンセルしたこと、により使用金額が予定を下回ることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度は、助成金を、長期の休みを利用して計画している共同研究者との研究打ち合わせ(海外出張)に使用する予定。
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Research Products
(13 results)