2017 Fiscal Year Annual Research Report
Distribution of eigenvalues of random operators and related limit theorems
Project/Area Number |
26400148
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
南 就将 慶應義塾大学, 医学部(日吉), 教授 (10183964)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ランダム作用素 / 一般化シュレーディンガー作用素 / 感染症数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はランダムな差分作用素の連続極限を統一的に扱う一般的な枠組みを構築し、それをスペクトル統計応用することを目的としていたが、一般論の構築が予想以上に困難であったため、この課題については萌芽的な論文を公表するにとどまった。研究期間全体を通じて主に実施した研究は、当初の2次的な目標であった感染症数理モデルとの接点を探ることと、特殊な形のランダム作用素のスペクトルの性質を調べることにとどまったが、これらについて次の成果を得た。 (1) 減衰するホワイトノイズをポテンシャルとする1次元シュレーディンガー作用素を考察し、平成28年度までに(a)減衰因子が2乗可積分ならば、スペクトルの正の部分は絶対連続であることと、(b)減衰因子が2乗可積分でない場合はスペクトルの正の部分に点スペクトルが現れることを示した。さらに平成29年度には、(a)の場合にスペクトルの負の部分が高々可算個の固有値のみから成ることを証明した。 (2)我国では過去に女子中学生のみが風疹ワクチン接種を受けていたため、成人男女間の抗体保有率に大きな差がある。これを踏まえ、成人男女間の行動に緩やかな棲み分けがあるという数理モデルによって、我国に風疹大流行の素地があることを示した。また、かつての政策を長期間続けた場合の帰結をモデルにより考察し、ワクチン接種年齢以上の女子の集団においては抗体保有率が接種率の上昇とともに確実に上昇することを示した。 (3)平成29年度に、感染症流行における「世代間隔」の定義を明確にするための確率モデルを構成した。その結果、感染症流行初期の患者数の指数増大度と基本再生産数を結びつけるのは、従来言われていたような世代間隔の確率分布そのものではなく、接触頻度をゼロに近づけたときのその極限分布であることが示された。
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