2016 Fiscal Year Research-status Report
非アルキメデス的距離空間上の階層依存性のあるディリクレ形式理論の俯瞰的構築
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26400150
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
金子 宏 東京理科大学, 理学部第一部数学科, 教授 (90194919)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マルコフ過程 / 固有関数 / 統計的推論 / 擬似乱数 / 関数空間 / 容量 |
Outline of Annual Research Achievements |
A pairwise independent random sampling method in the ring of p-adic integers, Osaka Journal of Mathematics,53巻,3号 pp 775 - 798,2016.(査読有)を発表し,超距離空間上において全く知られていなかったワイルの無理数回転に対応するものが,回転角を固定された非有理数の整数倍回転とするのではなく,非有理数のファン・デア・コルプート列の一般項倍回転とすることによって得られることを,共著者とともに明らかにした.これはトーラス上での擬似乱数の理論が,ファン・デア・コルプート列とワイルの無理数回転を両輪として発展してきた経緯があるが,これと同様な発展が超距離空間上でも成し得ることを初めて示すものである.今後も発展のための道筋になり得る考察であり,俯瞰性に厚みが持たせられる根拠となる研究ができた.また,CAPACITARY ESTIMATE ON THE SPACE OF ENDS OF TREE BASED ON ORLICZ NORM,Facta Universitatis, Series Physics, Chemistry and Technology,14巻,3号 pp 120-127, Special issue, 2016(査読有) を発表し,超距離空間における完全正規直交系が固有関数となっている既存の確率過程の研究の枠外になる場合であっても,オーリッチ空間による容量を加味することにより,ポテンシャル論的な理論展開が可能であることを共著者とともに示すことができた.ディリクレ空間に対し,さらに有効性をもつ別の関数空間を付随させることが可能であることを示す研究ができた.俯瞰性のレベルの向上が図られることが示された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
所属部局の予期不可能な内部事情の発生により,研究時間上の制約がかなり生じていたが,そのような状態にあっても遂行可能な研究を選択し実行するよう留意した.具体的には今後の研究の推進の方向性に整合的な,マルコフ過程論と統計的推論を結ぶ考察の基礎となり得る考察に取りかかり,一定の良い感触を得ることもできている.上記内部事象により,出張等を控えた方が良い環境に置かれたことを受け,超距離空間における固有関数系と,その超距離空間を理想境界とするtreeにおける固有関数の関係を俯瞰的な構造把握にするため,ソフトウェアを使用する方向に研究方針を切り替えた.両者における固有値及び固有関数の間を結ぶ特徴的規則性について,基本的な把握をすることができた.これまで独立に進展してきたテーマを結び合わせる基礎的考察となり得るとの感触が得られたものと捉えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
裾野の広がりがある研究テーマであることを,比較的基本的な問題設定に立脚する形で,情報発信することができた.Roland Potthast 氏(DWD, Germany/University of Reading, UK)などのデータ解析関係者との接触をすでに図ってきたが,新しく有意義な問題意識に結びつけることも心がけつつ,完備正規直交系,固有関数に基づくこれまでの研究をより拡充することを意識した研究の遂行を行う方針である.具体的なテーマ設定の候補としては,データの分析の論拠を見出すために生かすなどの拡充的研究や,ディリクレ空間等に付随する関数空間を柔軟に適用する方法論の探求がある.研究課題の守備範囲の広さを確認したり,深化させる方向で研究をさらに続ける方針である.
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Causes of Carryover |
所属部局の予期不可能な内部事情により,研究時間上の制約かなりが生じていた.このため計画していた旅費を使用した研究の遂行に替えて,時間的制約があっても遂行可能な研究を選択し実行した.具体的には,部局内の事情の対応と同時並行的に,研究の進捗がなされる環境をつくるためのソフトウェアの購入や,常用のコンピューターのトラブルによる影響を受けないようにするため,ソフトウエア専用のコンピューター使用環境を確保すべく,新たなコンピューターの購入を行うなどの,研究遂行の円滑さを確保するため,出張等に代わる計画の変更があった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費を使用した研究の遂行などを,次年度使用額から支出行うことができるようになった.ソフトウェアの購入により,階層構造に付随する固有関数や固有値の規則的な出現の様子が分かりやすく捉えられるようになった.計算の進捗のしやすさと,知見獲得に適した環境をアドバンテージとして活かし,新しく有意義な問題意識に関連づけることも留意しつつ,完備正規直交系,固有関数に基づくこれまでの研究を多様な関数空間におよび得る理論の確立などの拡充的研究を,今後も広く深い検討を続けるため,旅費を使用した研究討論や発表の機会などの研究進捗環境の確保にも留意しつつ,研究を遂行する予定である.
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Research Products
(2 results)