2014 Fiscal Year Research-status Report
拡散-非拡散物質から成る反応系における相互作用とダイナミクスの関連性の探究
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26400156
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
鈴木 香奈子 茨城大学, 理学部, 准教授 (10451519)
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Project Period (FY) |
2014-02-01 – 2017-03-31
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Keywords | 反応拡散系 / パターン形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
自己増殖作用を持つ拡散-非拡散系の解の挙動について、拡散を無限大にした極限方程式系の解の爆発に関する知見を基に、拡散が十分大きい場合の拡散-非拡散系の解の爆発について考察した。ただし、非拡散物質が満たす方程式の非線形項が自己増殖作用をもつとする。特に、資源-消費者型の非線形項を持つ方程式系と、活性因子-抑制因子型の非線形項を持つ方程式系を扱い、それぞれについて有限時間で爆発する解の存在を示すことができた。具体的には、非拡散物質に対して爆発を誘発する初期値の形状を特徴づけることができ、その初期値の最大値をとる点で方程式系の解が有限時間で爆発することを示した。 これらの方程式系に対応する常微分方程式系の解は、時間大域的に存在しかつ有界であることが分かる。従って本結果により、拡散-非拡散系においては拡散の影響で解の爆発が引き起こされると考えることができる。しかしより本質的には、初期値の空間非一様性が重要であり、初期値の最大値をとる点における自己増殖作用による益々の増加を拡散が抑えきれない(拡散による抑制より速く増加するような初期値を構成することができる)ことが重要である。つまり自己増殖作用が爆発に重要な役割を果たしていると言える。これまでの研究で、拡散-非拡散系における自己増殖作用は、すべての定常解を不安定化させることが分かっている。ゆえに、本結果により自己増殖作用が解の爆発をも引き起こすことが明らかとなり、拡散-非拡散系における非拡散物質が方程式系のダイナミクスに与える影響がより明らかとなった。 これらの結果は、学術論文として発表するため現在準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年4月1日から平成26年9月30日までの6か月間、産前産後休暇及び育児休暇を取得し、研究開始が平成26年11月となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
自己増殖作用を持つ拡散-非拡散系について、拡散を無限大とした極限方程式系では有限時間爆発と無限時間で解が爆発する場合があることが分かっている。それに対応して、今年度は元の拡散-非拡散系において有限時間爆発する解の存在とそのメカニズム解明に取り組んだ。今後は、拡散-非拡散系の解で無限時間爆発するものの存在とそのメカニズム解明に取り組む。 まず初めに、具体例として発がんのメカニズムを記述した拡散-非拡散系を扱い、爆発解の存在を考察する。この方程式系に対応する極限方程式系については、無限時間で爆発する解の存在が分かっている。無限時間での解の爆発については、走化性を示す数理モデルの解でその存在が知られており、その性質に関する結果もいくつか知られている。しかし、本研究で扱う拡散-非拡散系の爆発解は、これら既知の結果とは異なる性質をもつ可能性があることが極限方程式系に対する解析から示唆される。ゆえに、まずは走化性の数理モデルで使われる解析手法を本研究で扱う拡散-非拡散系に応用できるか試し、爆発解の性質の類似点や相違点について理解する。無限時間爆発は数値実験でもとらえることが難しいが、一方で数値実験からの予測が解析手法や証明方針に大きく役立つ。ゆえに、一定の時間をかけて様々な初期値やパラメータの条件下で数値実験を繰り返し、データを蓄積しながら研究を進めていく。 また、拡散-非拡散系の極限方程式系は非局所項を含む方程式系であった。これに対する解析手法を基に、非局所項を含む数理モデルの解析を行う。非局所項を含む数理モデルは、生物個体群のモデルや確率微分方程式を用いた数理モデルで見られる。この際には、特に解の有界性、大域的挙動、対応する常微分方程式系との比較に注目して解析を行う。
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Causes of Carryover |
平成26年4月1日から平成26年9月30日まで産前産後休暇及び育児休暇を取得し、研究開始が平成26年11月からとなったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
数値計算をする環境を整えるため、パソコンや関連ソフトウェアの購入をする予定である。また、平成27年度は国内及び海外で開催予定の研究集会の組織委員を務めるため、自身が研究集会へ参加するための旅費、また参加者への旅費として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)