2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400157
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田沼 一実 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60217156)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非等方弾性体 / Rayleigh波 / 波の分散 / 残留応力 / 逆問題 / 弾性波の反射 / 国際情報交換 / アメリカ合衆国 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.弾性テンソルが弾性体の表面から深さ方向に変化する場合,弾性体の自由境界面を伝播する弾性表面波(Rayleigh波)の速度はその周波数に依存する(分散現象).非等方弾性体方程式の数学解析により得られた分散公式を基礎にして,本研究では深さ方向に変化する残留応力を含有する弱非等方弾性体に対して,Rayleigh波の分散曲線から残留応力を再構成する逆問題に一つの解法を示した.具体的には,残留応力の各成分を深さ変数の多項式で表現し,分散公式をもちいて計算した理論値と観測データである分散曲線とを比較することで,残留応力の多項式の係数を決定した.この結果は,弾性体の強度に大きく影響を及ぼす残留応力の非破壊評価という工学上重要な逆問題への,数学解析からのアプローチである点に意義が認められる.以上の成果を逆問題関係の専門誌に投稿できる状況となった. 2.等方弾性体の自由境界面に横波(S波)を入射した場合,反射波としてS波および縦波(P波)が生じ,さらには入射角が臨界角を超えると表面波も励起される.そこで斉次の弱非等方弾性体において,その非等方性が反射波にどのような影響を及ぼすかを考察するため,反射波の位相速度,伝播方向,変位の偏りに対して,非等方パラメタ―に関する漸近展開公式を導出する手続きを提案した.とくにそれらの漸近展開公式の第2項(第1項は等方弾性体のときに対応する)に対する,非等方パラメタ―の寄与の仕方を明確にした.臨界角を超えた場合に励起される表面波はP波に類似した性質をもち,弾性体の非等方性(残留応力を含む)を検知するのに感度が高いことが実験的に確められている.したがって本研究の試みは,非等方性の非破壊評価を定式化した逆問題解析への1つの数学的アプローチとして意義が期待される.以上の結果は国内の複数の研究集会(国際会議も含む)にて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
分散曲線の観測から残留応力の深さ方向の変化を再構成する工学上重要な逆問題に対して,非等方弾性体方程式の数学解析によるアプローチにより貢献できたことは価値あることといえる.また弾性波の境界反射は,弾性体の波動現象では無視できないテーマである.非等方性を微小パラメタ―とする漸近解析は,当初予測できなかった手法であるが,非等方性を再構成する逆問題への応用の見地からも意義が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
Rayleigh波の分散曲線から残留応力の深さ方向の変化を再構成する逆問題に関する結果を専門誌に投稿し,査読意見についても早急に対応する.また強い非等方性をもった横等方弾性体,および直交異方性弾性体に対しても,surface impedance matrixの周波数展開式,およびRayleigh波の分散公式の主要項・低階項を帰納的に導出し,その計算スキームを確立する.一方,弱非等方弾性体における弾性波の反射現象に対する漸近解析については,国内外の類似な研究との比較検討,すべての漸近展開項の可解性についての考察,非斉次弾性体への拡張,および逆問題への有用性を見きわめることが課題となる.
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Causes of Carryover |
平成27年9月と平成28年3月に海外共同研究者のアメリカ合衆国ケンタッキー大学教授 C.-S. Man 氏を各2週間訪問予定であったが,平成27年9月の訪問を取り止めたため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度のなるべく早い時期に海外共同研究者を訪問し,十分な研究打ち合わせを行う.
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