2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400157
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
田沼 一実 群馬大学, 大学院理工学府, 教授 (60217156)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 非等方弾性体 / 弾性表面波 / Rayleigh waves / 残留応力 / dispersion / 非破壊検査 / polarization ratio / 応用解析学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.残留応力は弾性体の強度に大きく影響を及ぼす.製造過程において残留応力を付加して,弾性材料の強度を上げることが行われている.とくに外界と接触する境界面においては,外部からの衝撃,摩擦等により亀裂や腐食が発生しやすいため,境界近傍に圧縮力を,境界から弾性体内部へ進むにつれて引っ張り力を付加することで,弾性体を強化することができる.しかしながら長期間,弾性材料として使用するにともない,付加された残留応力が解放され,その効果が薄れてくる.そこで調査時点において残留応力の境界面からの深さ方向の変化(プロファイル)を非破壊的に知ることができれば,再び適切な箇所に残留応力を付加することで弾性体の強度維持に貢献することができる.前年度までに本研究課題において得られたRayleigh波の分散現象(残留応力等により深さ方向の非斉次性を有する弾性体においては,自由境界面を伝播する弾性表面波(Rayleigh波)の速度がその波の周波数によって変化する性質)の数学解析を基礎に,速度対周波数の曲線(分散曲線)から残留応力を近似する多項式を導出した.その際,多項式の係数は線形方程式を繰り返し解くことで決定される点が,この方法の画期的な特徴である.以上の結果は,査読による多くの改良を経てようやく波動解析の国際専門誌に掲載された.この成果は,前述の残留応力の非破壊評価という工学上重要な問題への,数学解析によるアプローチであることに意義があり,他分野との接点も視野に入れた応用解析学における貢献の一例といえる. 2.前項1では,Rayleigh波の速度を観測量として残留応力等による非斉次性を再構成するが,他の観測量として境界面におけるRayleigh波の変位場の伝播方向と法線方向の成分比をもちいることも提唱されてきている.この成分比の分散現象の数学解析,非斉次性の非破壊評価への応用を計画している,
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
境界面におけるRayleigh波の変位場において,伝播方向と法線方向の成分比(polarization ratio)の摂動公式に関する前年度の結果は投稿中であるが,査読の大幅な遅れにより掲載未定である.
|
Strategy for Future Research Activity |
弾性表面波の境界面での変位場において,波の伝播方向と境界法線方向の成分比(Polarization ratio)は,弾性表面波の速度とともに,非破壊検査における有用な観測量であることが期待される.そのため,弾性体の非斉次性によるPolarization ratioの分散現象の数学解析,および逆問題への応用について考察する.これは交付申請書の「研究実施計画」に当初予定していなかった内容であるが,工学における非破壊評価等の他分野との接点も問題意識の中におく数学・応用解析学の立場からも意義ある研究内容であると確信される.
|
Causes of Carryover |
主として海外共同研究者の訪問を取りやめたため.次年度には研究打ち合わせと成果取りまとめのための国内・外国出張および,国際会議での発表を予定している.なお1年間の補助事業期間延長を申請し,承認を得ている.
|