2016 Fiscal Year Research-status Report
非線形波動に関連した偏微分方程式の解の存在と漸近挙動
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26400168
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片山 聡一郎 大阪大学, 理学研究科, 教授 (70283942)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 非線形波動 / 大域解 / 漸近挙動 / 零条件 / 弱零条件 / エネルギー減衰 |
Outline of Annual Research Achievements |
非線形消散項を持つ波動方程式の初期値問題を1次元空間において考察した。非線形項の次数が3以下の場合にはエネルギーが時間とともに0に減衰することが Mochizuki-Motai により示されている。また減衰は多項式オーダーであることも Wakasa-Yordanov により最近になって示された。今回, 1次元空間における非線形消散項を持つ波動方程式に対して, 初期値が十分小さく, さらに非線形項の次数が2より大きければ, 大域解は各点的に減衰するという結果を得た。またその応用として, 非線形項の次数が2と5の間にあれば, 小さな初期値に対してはエネルギーが多項式オーダーで減衰することを示した(室蘭工業大学の若狭恭平氏と北海道大学の B.Yordanov 氏との共同研究)。従来は1次元空間において非線形項の次数が3を超えるときにエネルギー減衰が起きるかどうかは全く分かっていなかったため, 得られた成果は極めて重要な知見を与えている。エネルギー減衰に関して, これまでの大半の研究においては重みつきのエネルギー法が用いられていたが, 今回は全く異なる手法により成果を得た: 具体的には, 弱零条件を満たす非線形波動方程式(系)の大域解の漸近挙動を簡約化した常微分方程式(系)の解の漸近挙動から得るという, 本研究課題でこれまでに開発してきた手法を応用して, 解の各点的な減衰評価をまず求め, その評価式を積分することによりエネルギー減衰を示した。あまり滑らかではない解や非線形項に対しても本研究課題の手法を適用できることが分かった点は大きな進展であると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度までに開発してきた非常に滑らかな解の挙動を調べる手法が, あまり滑らかではない解の挙動の研究にも状況によっては応用可能であることが明らかになり, 非線形波動方程式(系)の大域解の挙動についての新たな知見も得られた。また, 今回の研究成果により本研究課題で開発した手法についての理解もさらに深めることができた。以上から, 本研究課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画どおり来年度も様々な非線形波動方程式(系)などに対する大域解の存在条件とその漸近挙動についての研究を進める。今年度考察した1次元空間における非線形消散項をもつ波動方程式に対しては, 次数が5以上の場合にもエネルギーが減衰するのか, 次数が2以下の場合に各点的な減衰評価が得られるのか等の新たに取り組むべき問題も見つかったため, これについても研究を進めていきたい。
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Causes of Carryover |
購入予定図書の発売延期, およびスケジュール調整に起因する出張の延期により次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
発売延期となった図書の購入と延期した出張を次年度に行うことにより使用する計画である。次年度使用額は直接経費の6パーセント程度であり, 本来の次年度の予算執行計画を妨げることなく使用できると考えている。
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Research Products
(4 results)