2014 Fiscal Year Research-status Report
変係数発展方程式の解析とキルヒホフ型波動方程式の非線形構造の解明
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26400170
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
廣澤 史彦 山口大学, 理工学研究科, 教授 (50364732)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 偏微分方程式 / 非線形波動方程式 / キルヒホフ方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
非実解析関数のクラスにおけるキルヒホフ方程式の大域可解性について: キルヒホフ方程式の大域可解性の問題は、実解析関数または小さな初期値に対しては、適当な条件の下で大域可解性が成り立つ。また、初期値が非実解析関数である場合には、Nishihara[N84]による準解析関数クラス、またはManfrin[M05]によるManfrinクラスにおいては、大域可解性が成り立つことが知られている。[N84]と[M05]はそれぞれ、Ghishi-Gobbino[GG11]とHirosawa[H06]などによってより広いクラスに一般化されたが、これらのクラスは互いに包含関係が無いこと以上のことはわかっていない。本年度得られた研究成果は、Manfrinクラスを一般化した[H06]で導入されたクラスを、更にultradifferentiable classの立場から一般化したもので、[GG11]で導入された一般化された準解析関数のクラスを統一的に記述するための第一歩と期待される結果である。この結果は[H15]として公表済みである。 [N84] K. Nishihara, Tokyo J. Math. 7 (1984). [M05] R. Manfrin, J. Differential Equations, 211 (2005). [H06] F. Hirosawa, J. Differential Equations 230 (2006). [GG11] M. Ghisi and M. Gobbino, Bull. Lond. Math. Soc. 43 (2011). [H15] F. Hirosawa, Nonlinear Anal. 116 (2015).
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
キルヒホフ方程式の大域可解性の問題については、おおむね予想通りの結果を得ることができた。ただし、当初想定していた仮定では一部不十分な箇所があり、得られた結果は仮定を少し強めたより狭いクラスでの大域解の存在性である。この問題は、合成関数の高階導関数の評価における数え上げの問題に起因しており、それが技術的に解決可能な問題なのか、非線形性による本質的な問題なのか現時点では解明できていない。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究により、非線形波動方程式であるキルヒホフ方程式の大域可解性の問題において、伝播速度が時間に依存する線形波動方程式の解析が重要であることがわかっている。昨年度の研究成果も線型方程式の精密な解析結果によって得られたものであり、今後も線形問題の解析を進めることによって、キルヒホフ方程式の大域可解性の問題の最終的な解決に迫ってゆく予定である。具体的には、今年度以降次のような問題を研究してゆく予定である。 最近の研究代表者の研究によって、「非リプシッツ連続や退化などの特異性を持たない」時間変数係数の波動方程式のエネルギーの時刻無限大における漸近評価において、初期値の滑らかさ、すなわち高周波領域の減衰オーダーが寄与しうるという結果が得られている。エネルギーの漸近評価に高周波領域はほとんど影響しないと考えられていたこれまでの研究に対する新たな見地であり、同時に、この研究の推進は、初期値の滑らかさが大きな意味をもつキルヒホフ方程式の大域可解性の問題への応用も期待される。
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Research Products
(6 results)