2016 Fiscal Year Research-status Report
変係数発展方程式の解析とキルヒホフ型波動方程式の非線形構造の解明
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26400170
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
廣澤 史彦 山口大学, 創成科学研究科, 教授 (50364732)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 偏微分方程式 / 非線形波動方程式 / キルヒホフ方程式 / 変数係数 / クラインゴルドン型方程式 |
Outline of Annual Research Achievements |
空間変数に関して非局所的な非線形項を持つ非線形双曲型方程式の一種であるキルヒホフ方程式の精密な解析において、その線形モデルである時間変数係数の線形双曲型方程式の解析は重要と考えられる。特に定数係数方程式の摂動と解釈することが困難な、係数が激しく振動する線形モデルの解析は、キルヒホフ方程式の大域可解性の証明で鍵となる高次エネルギーのアプリオリ評価に貢献することが期待される。平成28年度の研究実績は主に次の二つの方程式に関するエネルギーの漸近評価に関する結果である。 1. 伝播速度が時間に依存する波動方程式 2. 時間に依存する質量項を持つクラインゴルドン方程式 1では、時間とともに拡散効果が減少する、すなわち伝播速度を与える係数が減衰する波動方程式の初期値問題において、エネルギー評価が得られるための係数の減衰オーダーと微分可能性、高次導関数のオーダーに対する十分条件を証明した。この結果において特に興味深い事実は、定数係数の場合には均等になる運動エネルギーと弾性エネルギーが、変数係数の場合には一般にそのオーダーが異なることである。2では、時間に依存する質量項が解のポテンシャルエネルギーに与える効果とその最適性を証明した。この結果において興味深いのは、エネルギーの評価において本質的なのは質量の時間に関する積分値であり、質量そのものの正値性は本質的ではないという事実である。1、2の結果とも、証明のキーとなったアイディアは、時間のみに依存する変数係数モデルにおいて有効な時間・周波数領域における精密な解析であるが、特に今回の結果は、低周波領域における変数係数常微分方程式の解の評価の改善によって従来の手法では得られなかった評価である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度の研究は、主に線形の変数係数波動方程式とクラインゴルドン方程式で、特に係数が振動を伴うモデルに対するものであった。いずれの問題に対しても、定数係数や単調な係数に対する既知の結果からは想定し難い、係数が本質的に振動する場合にのみ起こりうる新たな展開があった。
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Strategy for Future Research Activity |
双曲型方程式において、定数係数の場合には方程式の代数的な性質によって解の性質は比較的容易に特徴づけが可能である。一方、変数係数の場合にはその構造は非常に複雑である。係数が単調な場合には、そのオーダーによる特徴づけがある程度可能であるが、振動を伴う場合にはその解析は容易ではない。本研究課題は、既存の方法では困難なそのような問題に対する新たなアプローチであり、波動方程式、クラインゴルドン型方程式に対する研究に関しては一定の成果を上げることができた。これらの方程式を含む一般の変数係数双曲型方程式に関して、その適切性やエネルギーの有界性における低階項の影響は、「レビ条件」として重要な問題である。単調な係数に対するレビ条件については多くの研究結果が既に存在するが、本質的に単調でない係数に対する結果は殆ど知られていない。今後は、本研究課題で発展させたアプローチを用いて、このような問題に対する新たなレビ条件の定式化に関する研究を行ってゆく予定である。
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Research Products
(7 results)