2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400172
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
仙葉 隆 福岡大学, 理学部, 教授 (30196985)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | 走化性方程式 / 知覚関数 / 時間大域解 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、一般化された走化性方程式の解構造を調べ、これまで盛んに研究されてきた基本的な走化性方程式の解構造と比較することであった。ここで、走化性とは生物が化学物質の刺激を受けて移動する性質のことであり、走化性方程式は走化性を持つ生物の集中現象を記述するために導出された方程式である。 本年度は、生物の密度関数の時間変化の方程式の時定数が非常に小さい場合について研究を行った。これは化学物質の濃度の時間変化に比べて生物の密度の時間変化が極めて素早く起こる状況に対応する。この仮定の下で2次元以上の領域における一般化された走化性方程式の古典解が時間大域的に有界になる移流項の必要条件を見出した。この必要条件は、同時定数が0となる極限方程式においては解が時間大域的に有界となる必要十分条件であることが知られており、本研究で見出された必要条件は必要十分条件であることが期待される。 これに対して先行研究では、時定数を1とし移流項を対数関数の定数倍 χlogによって表現される具体的な場合についての研究が主流であり、その研究も解が時間大域的に有界になるための定数χの大きさの条件を明らかにすることが主流である。本研究では、時定数が小さい場合に限ることにより定数χに対するもっとも良い必要条件を得ただけでなく対数関数で表現される移流項を含む一般化された移流項に対して結果を得ることにも成功した。 また、領域や解に対して球対称等の対称性を仮定することなく結果が得られたことも評価に値することであると考える。これらの結果を、国際研究集会において口頭で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は本研究期間の3年目であり、関連する研究の進展状況を把握することに加えて一般化された走化性方程式の解構造に関していくつかの研究成果を得ることができた。特に、2年目である昨年度は解や領域が球対称であるという仮定の下で研究成果を得たが、本年は解や領域に対称性を仮定することなく解構造に関する研究成果が得られた。また各年度に1回、関連する研究者と討論するために研究集会を開催している。さらに、関連する研究の講演を聴講するために毎年度数カ所の研究集会に出席し情報や資料を収集している。以上のように、研究成果、情報・資料収集の観点から本研究はおおむね順調に進展していると判断する。 特に、この3年間において2次元領域における一般化された走化性方程式の解構造の研究に関して満足のいく成果が得られたと考えている。2年目の研究においては、9研究実績の概要に書いた時定数が十分大きな場合と時定数が無限大である場合について2次元円板上の一般化された走化性方程式の球対称解が時間大域的に有界になる必要条件を見出したが、本年度の研究により時定数が非常に小さい場合も同じ条件が必要条件となることが示された。さらに、時定数が0と無限大である極限方程式ではその必要十分条件であることが知られている。これらのことを踏まえると2次元領域の場合に本研究で得られた必要条件は、全ての時定数に対して必要十分条件である事が期待される。このように、研究の目標が明確になったという意味で特に2次元領域に関する研究成果は評価できると考える。また、9研究実績の概要で述べたように3次元以上の領域に関しては時定数が非常に小さい場合に研究成果が得られた。
|
Strategy for Future Research Activity |
3年目の研究を終えて、9研究実績の概要、11現在までの進捗状況で述べたように一般化された走化性方程式の時定数が非常に小さい場合について、2次元以上の領域における解が時間大域的に有界であるための移流項の必要条件を明らかにした。同時に、3年間で収集した情報・資料に関する検討や関連する研究者との討論を踏まえると全ての時定数と全ての次元に関して解が時間大域的に存在する移流項の必要十分条件を本研究期間内に明らかにする事は困難であると判断した。 従って4年目と最終年度は、時定数が非常に大きい場合と非常に小さい場合に絞って研究を行い、全ての時定数に関する一般的な走化性方程式の解構造の研究の指標となる条件を見出す事を目標として研究を行って行くことを計画している。 現在の研究成果を踏まえると、時定数が非常に大きな場合について2次元円板上の球対称な解についての2年目の研究成果を踏まえて、同じ成果を対称性の仮定なしで得る事が次の目標であると考える。また、時定数が非常に大きな場合や無限大の場合に関しては3次元以上の領域における解構造に関してはまだ満足のいく必要条件が得られていない。以上のように、時定数が非常に大きい場合について解が時間大域的に存在する最良の必要条件を残りの研究期間において明らかすることを計画している。 そのために3次元領域における基本的な走化性方程式の解構造を、時定数が非常に大きな場合の一般的な走化性方程式の解構造の研究の視点から見直すことで解析すべき解の性質を明らかにする。さらに時定数が無限大の場合に解の表示に用いられる積分核を解析する。これらの方針に沿って3次元領域における一般的な走化性方程式の解構造を時定数が非常に大きな場合について明かにすることを計画している。
|
Research Products
(2 results)