2015 Fiscal Year Research-status Report
縮約系を応用した高次元空間にみられる現象の解明と解析的手法の構築
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26400173
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
辻川 亨 宮崎大学, 工学部, 教授 (10258288)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | bifurcation / reaction diffusion / statiionary solution / stability |
Outline of Annual Research Achievements |
自然界において、生物の個体群動態モデル、化学反応モデルなど非線形反応拡散方程式で記述される現象は多種多様である。本研究では化学物質に走性のある生物が作るパターンの形成メカニズムを解明する。走性のある生物のモデル方程式として、同じ時間スケールで増殖するものとそうでない場合とでは出現するパターンに大きな違いがある。前者は解の爆発現象を伴うものであり、後者は増殖の効果に依存して時間・空間パターンの出現が実験及び理論的ないくつかの結果として知られている。しかし、未解決な問題がいくつか残っている。例えば、走化性の強さと増殖効果の釣りありで時間大域解の存在についても完全に分類されていない。また、定常解の存在とその安定性に関しても、方程式に含まれるパラメータ依存性についても同様である。本研究では生物の拡散と移流係数を大きくした場合の極限方程式(以後Shadow Systemという)について、分岐理論、Level set法と特異摂動法を用いて定常解の局所的な存在、またその解を起点とした大域的な解構造を解明し、線形化固有値問題を解析することで、それらの解の安定性を示した。特にアレンカーン型とロジスティック型の2つの増殖項について、その解構造の違いと類似性を示した。また、数値的に非定数定常解からホップ分岐が起こることを示し、その解析も進めているが、定数解からの2次分岐としての周期解の存在を示すことは難しい問題である。 走化性増殖モデル方程式とShadow Systemの関係について、定常解の解構造を含めて、適切な関数空間を設定することでパラメータに関する収束性を示した。これにより係数が大きい場合の定常解の解構造を解明するにはShadow systemを考察することが重要である。また、細胞極性モデル方程式において、非定数定常解から2次分岐が起こることおよび大域的解構造を、特殊関数を用いて示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走化性増殖モデル方程式について、パターン形成の観点から定常解の大域的構造およびその安定性を示すことは重要な問題である。そのために、多次元有界領域においてNeumann境界条件のもと拡散移流増殖方程式に対して、Leray-Schauder degree 理論を用いて非定数定常解の存在に関する十分条件を示した。また特異摂動法により内部遷移層と境界層を持つ解の存在も示したが、パラメータに関して局所的な結果である。次に大域的解構造を考察するため拡散および移流係数を大きくした極限系せある、積分条件付き2階楕円型方程式を考察し、定常解について適切な関数空間を設定することでパラメータに関する収束性を示した。これにより、定常解についてShadow Systemを解析することにより、パラメータが十分大きい場合の解構造も求めることができる。分岐理論、特異摂動法などを用いることにより大域的解構造を解明した。増殖項がロジスティック型の場合、Sardの定理により定常解の集合がパラメータ領域において測度0を除いてJordan曲線となることも示した。一方、定数解からの分岐解について、安定性を議論する上で重要な分岐点近傍での分岐方向の決定および拡散係数が十分小さい場合の特異極限解の存在とその安定性を示すことができた。また、細胞極性モデル方程式から得られる類似の積分条件付き方程式について、適当な変数変換により特殊関数を用いて定常解の表示が可能となり、すべての定常解を求めることができた。これにより非定数定常解から2次分岐が起こること、および線形化固有値問題を解析することで定常解の安定性も示した。 増殖項がアレンカーン型の場合、Shadow Systemの解析については、一方の拡散係数が小さい場合、数値計算により解の非存在が予想されているが証明できないため、非定数定常解の大域的構造を十分に示したとは言えない。
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Strategy for Future Research Activity |
増殖項を含む走化性モデル方程式において、数値計算によりロジスティック型増殖項についてはIzuharaらにより、いくつかのことを仮定することにより緩和振動現象が起こることが示された。一方、増殖項がアレンカーン型の場合にも形式的な議論により同様の緩和振動現象が増殖効果が弱いときにも示される。一般に反応拡散方程式において緩和振動系であることを示すためにはいくつかの仮定を置く必要がある。例えば部分力学系における定常解の大域的安定性などである。一方、Shadow systemにおいてはその部分力学系が積分微分方程式となることから解析的扱いが容易となると予想される。1つの手掛かりとして、1990年ごろ、BrunovskyとFiedlerによる、有界区間においてDirichlet境界条件のもとスカラー方程式に対して、2つの異なる定数解をつなぐ軌道の存在、Shadow Systemにおいては、Kokubuらにより単調解をつなぐ軌道の存在が示されたことである。これらの結果を応用して、2つの非定数定常解をつなぐ軌道の存在とある意味での安定性を示すことを試みる。またこの結果を基に、Hopf分岐による周期解の存在を示すことも目指す。 一方、非線形半群の理論により発展方程式において、対応する力学系が有限次元の指数アトラクターをもち、移流および拡散係数が大きくなることでその次元がいくらでも大きくなることを示した。そこで、パラメータに関する力学系として、連続性および収束性を考察する。 走化性増殖モデル方程式のshadow Systemにおいて、増殖項がロジスティック型の場合ほとんどのパラメータにおいて、その定常解の大域的解構造を理論的に示した。しかし、増殖項がアレンカーン型の場合については、その解構造が異なる(非定数定常解からの2次分岐)ことを予想している。
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Research Products
(3 results)