2016 Fiscal Year Research-status Report
時間遅れをもつ積分方程式の定性理論の構築とその応用
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26400174
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
松永 秀章 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40332960)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 時間遅れ / 積分方程式 / 差分方程式 / 漸近安定性 / 振動性 / 周期性 / 特性根解析 / 相平面解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1) 特性根解析を用いて、2つの時間遅れをもつスカラー線形積分方程式の零解の漸近安定性に関する必要十分条件を時間遅れと係数のパラメータで具体的に与えることができた(投稿準備中)。本研究は、前年度に与えた1つの時間遅れをもつ線形積分方程式の零解の漸近安定条件の自然な拡張になっている。今回得られた主結果の2次元方程式への拡張については今後の課題である。 (2) 時間遅れをもつスカラー非線形差分方程式に対する双対的な振動条件と非振動条件を導出し、先行研究を一般化することができた(投稿準備中)。主結果は、スカラー非線形差分方程式を同値な方程式系に変換し、相平面解析を用いて証明される。すなわち、相平面上の方程式系の解軌跡を考察し、元の方程式の解が振動するならば対応する相平面上の解軌跡は原点の周りを無限回まわり、元の方程式の解が振動しないならば対応する相平面上の解軌跡は第1象限または第3象限のある領域に終局的に留まる性質に着目する。 (3) ある2次元分数型差分方程式の解の表現公式を付随する線形方程式の解を用いて確立した。また、大域解の存在条件を初期値によって明確にし、大域解の漸近挙動を分類した。特に、先行研究で見逃されていた解の周期性を完全に解明した(投稿準備中)。 なお、2016年7月24日から7月29日まで大会委員長として大阪府立大学 I-siteなんば において、第22回差分方程式とその応用に関する国際会議(ICDEA2016)を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
交付申請書に記載した平成28年度の研究計画は3つである:1.線形化方程式の特性根解析;2.再生方程式への応用;3.積分方程式論と差分方程式論との比較研究 1の2つの時間遅れをもつスカラー線形積分方程式に対しては順調に進み、良好な研究成果が得られたが、2次元方程式への拡張について予想が立てられているものの、最後の不等式の証明が未解決のためにペンディングになっている。また、時間遅れをもつ非線形差分方程式の解構造に関する研究が大きく進展したことからも分かるように、本年度は3の研究を優先させたため、2の研究は次年度に継続することになった。さらに、26年度と27年度に得られた研究成果を論文にまとめて投稿する予定であったが、差分方程式とその応用に関する国際会議(ICDEA2016)の開催準備、運営およびProceedingsの編集作業に多くの時間をとられたため、論文執筆の時間が十分確保できず、研究の遅れにつながってしまった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の進展がやや遅れているものの最終年度は、これまでに得られている研究成果を国際専門誌に論文投稿し、本研究の総仕上げを行うことを最優先課題とする。平行して、互いに対応する時間遅れをもつ積分方程式の解構造と時間遅れをもつ差分方程式の解構造における類似性と特異性に着目しながら比較研究を進めていく。本研究は積分方程式論と差分方程式論を結びつける新しい視点での研究であり、今後の進展が大いに期待されている。また6月にポルトガルで開催される微分方程式および差分方程式とその応用に関する国際会議 (ICDDEA2017) に出席・講演し、海外研究者と学術交流を行う。さらに、11月に京都大学数理解析研究所で開催されるRIMS研究集会「実領域における常微分方程式研究の継承と革新」の海外講演者として、ハンガリーのKrisztin教授を招聘予定であり、積分方程式や関数微分方程式の安定性問題について討議し、本研究を推進する。
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Causes of Carryover |
2016年7月24日から7月29日まで大会委員長として大阪府立大学 I-siteなんばで開催した第22回差分方程式とその応用に関する国際会議(ICDEA2016)の開催準備費および運営費に残額が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年11月6日から8日に京都大学数理解析研究所で開催されるRIMS研究集会「実領域における常微分方程式研究の継承と革新」の海外講演者として、ハンガリーのKrisztin教授を招聘するための旅費に使用する。
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