2015 Fiscal Year Research-status Report
走化性・増殖系に現れる非線形現象とその解析-これまでとこれから-
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26400180
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
大崎 浩一 関西学院大学, 理工学部, 教授 (40353320)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鳴海 孝之 九州産業大学, 工学部, 特任講師 (50599644)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | Keller-Segel系 / 走化性方程式 / 走化性・増殖系 / パターン形成 / 反応拡散方程式 / ミツバチ / 非線形現象 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,反応と拡散が起こる場に走化性の作用が加わった系に対して,これまでの研究をまとめ,またそこから派生するこれからの課題を研究することを目指しています.今年度得られた成果は以下の通りです:1.弱減衰作用を有する走化性・増殖系の時間大域存在.これまで,L2ベースのソボレフ空間を選択した場合に,空間3次元までの時間大域存在を示すことができていました.今年度,これをLpベースのソボレフ空間(p>N)とした場合に,空間一般次元における時間大域存在を示すことができ,その成果が印刷中です.さらに領域の凸性を仮定すると,減衰オーダーの制限を緩和することが可能となることも分かり,現在その成果を査読付き論文誌に投稿中です.2.空間2,3次元の走化性・増殖系の解のパターン形成.これまで,研究代表者らの研究によって,2次のロジスティック項を有する走化性・増殖系に空間2,3次元において,最密充填構造を有するパターン定常解の存在が示されています.その成果を含む内容を九州関数方程式セミナーにおける招待講演で発表しました.3.反応と拡散が起こる場における遷移層ダイナミクスに対する曲率方程式の定式化.本研究では端点を有する有限長の曲線について,その微分幾何学的定式化と数値計算スキームの開発を行い,成果をDCDS-Sにおいて出版しました.4.走化性昆虫の造巣過程に対する数理モデリング.走化性生物のプロトタイプとしてミツバチを取り扱い,その造巣過程を観察しています.最終的には微分方程式モデルとして定式化し,その解析を行うことを目標としていますが,今年度はまず,N個体に対するエージェントシミュレーションにて造巣初期段階のモデリングを行いました.その成果を,生物の群行動とロボティクスに関する国際研究集会におけるポスター発表を含む2件にて公表し,また査読付きアブストラクトも公表しています.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
走化性・増殖系に関して,弱減衰作用を有する場合の時間大域存在およびその解のパターン形成について,1件の査読無プロシーディングスにて成果発表ならびに1件の査読付論文誌に投稿中,および2件の招待講演にて成果発表を行っています.また,反応と拡散が起こる場における界面運動に関する研究成果を1件公表しています.加えて,これからの課題として,走化性昆虫の造巣過程に関する数理モデリングの研究が,査読付アブストラクト集にて1件公表され,また2件のポスター発表を行い,現在フルペーパーとして内容を充実させたものを投稿準備中です.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに,走化性・増殖系に関して時間大域存在とその定常パターン形成について,研究をまとめ,また進めることができました.今後,数学的に同様の構造を有するDeneubourg社会性昆虫系や吸着質相転移系などについて手法の適用や,そこから派生する新たな研究課題について考えていきます.走化性昆虫の造巣過程に対する離散モデルについては,現在投稿準備中であるものを確実にパブリッシュできるよう努め,また,連続モデルへの近似・展開として,流体極限的視点や確率論的視点を導入して,これを進めていく予定です.
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Causes of Carryover |
ミツバチの造巣過程の観察実験に関して,前倒し支払い請求をしましたが,年度末にかけて,群数が急激に減り,年度内に予定していた実験を行うことができませんでした.また,社会人博士課程の学生との研究打合せならびに共同研究について,当初の予定ほど学生本人の仕事が忙しくて時間が取れず,年度内の予算使用が不可能でした.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度気温がしっかり高いところで安定してくれば,再び群数が増える見込みで,年度内に予定していた実験を開始することができます.また,社会人博士課程の学生に関しましても,来年度早々に面談できる見込みであり,今後の詳細な研究計画ならびに予算執行の予定を立てることができます.
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Research Products
(8 results)