2014 Fiscal Year Research-status Report
非線形結合振動子系の同期モードと時間遅れの影響に関する研究
| Project/Area Number |
26400183
|
|---|
| Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
|---|
Principal Investigator |
江上 親宏 東京農業大学, 地域環境科学部, 准教授 (90413781)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
| Keywords | 結合振動子系 / リズム現象 / 同期現象 / Hopf分岐 / 数理生物学 / 写像度 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、結合したリミットサイクル振動子系の引き込み現象と時間遅れの影響の解析に向けて、写像度理論と位相縮約法を融合した新手法の確立を目的とする。
主な研究対象は、BZ反応系とvan der Pol型方程式系である。結合振動子系のリミットサイクル多重存在問題においては、S1-degree theoryと位相縮約法を組み合わせてLimit cycleの振動数を区別する方法を、外部摂動による強制引き込み現象に対しては、Coincidence degree theoryと位相縮約法を組み合わせて解の安定性判別の手法をそれぞれ提示する。また、数学独自の視点から結合力の強さや時間遅れの大きさを調節できるような工夫を施した実験系を構築し、数学モデルの解析結果を実証する観測データの取得を目指す。初年度は次の２点に専念した。
１．ポンプとチューブを用いて2つのBZ振動子を接続した反応系（2槽時間遅れ結合系）では、適当な結合強度のもとでチューブ長を長くする（すなわち時間遅れを大きくする）とリミットサイクルが分岐を起こし、同相と逆相の2つの同期モードが共存する。化学実験で取得したデータが示す現象を分類し、一方では数学モデル上のパラメータの適切な値を同定して数値解析を行って、両者を結果を照合することでモデルの妥当性について評価・検討を行った。
２．2種類の触媒(セリウムとフェロイン)が作用するBZ反応において反応溶液が4色6段階に変化するリズム現象に対して、数学モデルを構築しHopf分岐の存在定理による理論的な証明は完了しており、目下、実験データと合わせて論文執筆の段階にある。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2槽時間遅れ結合系の研究課題において、実験データとの整合を図る数値解析についてはほぼ計画通りに進んでいるが、モデルの数学解析面でやや遅れている。
今年度当初より所属が変わったことにより、研究環境を一から整備する必要があったため、この点に多くの時間を要した。
|
| Strategy for Future Research Activity |
１．2槽時間遅れ結合系の数学解析において、結合項の時間遅れの大きさがリミットサイクルの多重存在性に対する本質的要因であることの理論的証明の完成を目指す。この方策として、古典的な結果とS1-degree理論の融合した解析手法の構築が現状では最も有力であり、この方針に沿って研究を推進する。
２．BZ振動子の数学モデルは1つのリミットサイクル振動子であるから、外部から周波数摂動に対して強制引き込みを起こす。BZ反応に用いられる金属触媒には光感受性があり、反応層の溶液に光を照射すると振動が抑制されるが、この性質を利用した強制引き込みによりBZ反応のリズム制御の実現を目指す。そのために、連続流通撹拌反応槽を設計・製作し、反応の材料となる物質の濃度を槽内で一定に保ちながらUVを照射し反応溶液のORPを測定する実験に取り組む。このとき、UVの照射リズムとBZ反応の振動数をある程度近づける必要があるため、触媒の化合物（おもにルテニウム錯体とフェロイン）をブレンドして溶液のUV感受性を調整する工夫を行う。
|
| Causes of Carryover |
今年度は、従来取得済みの実験データの分析と数学モデルの理論解析・数値シミュレーションを中心に研究を進めたため、実験機器類の購入を次年度にまわすこととした。
また、所属機関を変わったことに起因して出張の機会が少なく、予定していた旅費支出がなかった。
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
実験に要する計測機器、およびそれに付随する周辺機器およびソフトウェアの購入に充てる。
|
