2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400195
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
木村 正人 金沢大学, 数物科学系, 教授 (70263358)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 亀裂進展モデル / バネブロックモデル / 移動境界問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、研究実施計画に従い以下のような研究成果を得た。 (1) 代表者らが提案している亀裂進展フェーズフィールドモデル(TKモデル)は、エネルギーの勾配構造と亀裂の非修復性という2つの大きな特徴を持っている。この2つの性質を両立して厳密に取り扱うための数学的枠組みを構築する試みとして、より簡略化した同様の性質を持つ単独の非線形放物型偏微分方程式を考え、その強解が時間大域的に一意に存在することを証明した。通常の弱解の定義が出来ない非線形性の強い方程式ではあるが、粘性解は定義可能であるような比較定理の成り立つ系であることをうまく利用し、エネルギー評価と比較定理を組み合わせることで強解を直接構成することに成功している。 (2) 有限要素法によるTKモデルの数値シミュレーションを行い、エネルギー理論に基づく亀裂進展解との比較を試みた。それにより、詳細な比較を行うためには、安定な亀裂進展と不安定なそれとを明快に区別する必要があることがわかり、現在は亀裂進展が安定・不安点であるための数学的基礎付けを進めている。 (3) 代表者らによる離散型破壊モデルのベースとなる線形弾性体のバネ・ブロック系による近似問題の数学解析を行った。 特に、テンソル値バネ定数の対称性を証明し、ポアソン比が小さい場合には正定値性が成り立つことを示した。これは従来、バネブロック系の数値計算においてはポアソン効果が出にくいという経験的に知られていたことを数学的に解き明かしたことになる。 (4) 移動境界問題の変分構造保存型解法の拡張を試み、辺の個数を増加させることのできるデンドライトモデルに着手し、数値計算アルゴリズムの開発と、今後の数学的枠組みの確立に向けた予備的シミュレーションを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究実施計画について、概ね計画を達成し研究成果についても論文3編に加え、以下のように論文を準備中である。 (1) G. Akagi and M. Kimura: Unidirectional evolution equations of diffusion type. arXiv:1501.01072[math.AP] (2015) (2) Armanda I., M. Kimura, T. Takaishi and Maharani A. U.: Numerical construction of energy-theoretic crack propagation based on a localized Francfort-Marigo model. Recent Development in Computational Science Vol.6, Kanazawa e-Publishing (submitted). (3) 田中智恵,木村正人:特異性を持つ多角形運動と雪の結晶成長モデルへの応用.京都大学数理解析研究所講究録(投稿準備中)
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の計画が達成されたので、今後も当初の研究実施計画に従い、それぞれ次の目標を掲げる。 (i) 初年度で得られた不可逆性を持つ非線形方程式の数学的枠組みを元に、TK モデルの解の一意存在を数学的に示すことを目標とする。また、初年度で構築した数値計算体制を使って、有限要素法によるTKモデルの2次元または3次元の数値シミュレーションを行い、その解の性質を数値的に調べるとともに,工学的な応用の可能性を探る。 (ii) 初年度で得られたバネ・ブロック系についての成果に基づき、バネ・ブロックモデルの数学解析を進める。特に解の一意存在と安定性について調べ、振動・破壊モデルへの拡張方法を探る。また、同時に数値シミュレーションを行い、その解の性質を数値的に調べるとともに、工学的な応用の可能性を探る。 (iii) 初年度で得られた移動境界問題の変分構造保存型解法の拡張についてその数学的な解析を行う。それにより辺の向きや個数を変化させることのできるより柔軟な移動境界問題の 数値計算モデルの枠組みを構築し、数値シミュレーションによりその有効性を確認する。
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