2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400211
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
竹内 康博 青山学院大学, 理工学部, 教授 (20126783)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 数理モデル / 免疫 / 癌 / 安定性 / カオス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,HIV感染に代表されるウイルス感染と人間の免疫防御の構造と機能を解明することを目的とする.ウイルスの感染プロセスと免疫作用の活性化プロセスを一般化した数理免疫モデルを構築する.その際,一般化が医学的に妥当なものであることを確認する.モデルの大域的安定性をリアプノフ関数を構築しラサールの不変原理を用いて解明する.得られた条件を免疫学的に評価し,不自然なものであった場合には再度モデルの構築に戻る.さらに一般化された数理免疫モデルに関して,感染細胞がウイルスを生産するようになるまでの時間遅れと免疫細胞が活性化されるまでの時間遅れを導入して,モデルの大域的安定性に対する時間遅れの影響を評価する.不安定現象が発生する構造を明らかにする.本研究は医学的に妥当な数理モデルを構築・評価するために数理科学研究者・医学研究者が共同する. 本年度は免疫システムと癌との関連をヘルパーT細胞を導入して、数理モデルを構築して、定性的解析と数値計算を行った。このモデルでは、養子免疫療法を表す関数を導入した。この療法の下では、癌細胞がその最大値で生き残ることが不可能であり、癌が抑えられることを解析的に示した。またヘルパーT細胞のエフェクター細胞活性化率を大きくすると、安定であった平衡点が不安定化し、周期解を生じることが示された。さらに癌細胞がヘルパーT細胞を活性化させるためには一定の時間遅れがあり、また癌細胞がエフェクター細胞を活性化するためにも時間遅れが存在するという仮定をモデルに導入した。後者の時間遅れは平衡点を常に不安定化するが、前者の時間遅れは平衡点を安定化する場合があることを示した。また、2つの時間遅れが同時に存在する場合には、ヘテロクリニックサイクルが生じ、カオス解が出現することを数値計算で示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は免疫システムとウィルス感染の数理モデルによる考察を行う予定であったが、癌細胞と免疫システムの関連でヘルパーT細胞の働きを考察した数理モデルが研究されていないことに気が付いた。そのため、癌・免疫数理モデルを構築し、その安定・不安定現象の構造について考察した。さらに2つの異なる時間遅れを導入した数理モデルに関して、数値計算をしたところ、時間遅れを導入するプロセスを異なる場所にすると、時間遅れのモデル平衡点の安定性に対する影響が異なることが示唆され、また2つ同時に時間遅れを導入すると複雑な解軌道が得られることが発見された。そのため、癌細胞・免疫システムの研究を先行させた。この研究で開発された数理手法や解析におけるアイデアは、本研究の本題である「免疫システムとウィルス感染の数理モデルによる考察」のために応用可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの達成度で述べたように、癌細胞・免疫システムに対して昨年度開発した解析手法を免疫システムとウィルス感染の数理モデルによる考察に応用する。また医学研究者との連携も図っていく予定である。
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Causes of Carryover |
共同研究を予定していた外国人研究者研究機関への出張が、私と先方との都合により調整がつかなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は予定を合わせ、出張し、共同研究を実施する。
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