2015 Fiscal Year Research-status Report
ロゼット・モードで探る恒星における振動と自転の相互作用の研究
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26400219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 将郎 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (20334245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉尾 英行 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 名誉教授 (10162174)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 恒星振動 / 恒星自転 / 恒星内部構造 / 脈動変光星 / 星震学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の全体の目的は、回転星にみられる特殊な構造をもつ振動モード、ロゼット・モードについて、その起源を理論的に解明し、恒星の内部構造と進化における意義や星震学における役割を検討することである。平成27年度は、とくにロゼット・モードが現実的な星で励起される可能性を探り、またその角運動量輸送への寄与について調べた。 平成26年度までの研究により、ロゼット・モードは自転が比較的速い星の低周波数(長周期)領域で見つかる可能性があることがわかった。とはいえ星の特定の固有振動モードが観測されるほどの振幅を持つかどうかは、振動振幅を大きくする効果(励起機構)と小さくする効果(減衰機構)のせめぎ合いで決まり、詳細はそれぞれの星の内部構造に依存する。そこで前述の高速自転、長周期振動という条件を考慮した結果、ロゼット・モードが励起されるとすれば比較的質量の大きい主系列星、変光星のタイプで言えば、長周期振動B型星(SPB)であろうという予想をたて、このタイプの星の現実的なモデルを構築し、その振動モードを数値的に計算した。とくに5太陽質量の主系列星の場合を詳細に調べると、自転角速度が臨界値の約25%(赤道自転速度約150 km/s)を越えないような場合に、実際に励起されるロゼット・モードが存在することがわかった。また、振動に伴う角運動量輸送について評価した結果、ロゼット・モードの場合にはその特殊な構造に対応し、通常のモードとは異なり、角度方向の輸送に特徴的な寄与が見られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画通り、ロゼット・モードが現実的な星で励起されるかどうかを検討し、予備的な結果を発表できたが、結果の詳細についてはまだ発表するに至っていないため。こうなった原因の1つは、研究を進める過程で、当初予想していなかった、ロゼット・モードの構造に対する遠心力の効果が無視できない場合があることがわかり、その検討に時間を割く必要が生じたことである。
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Strategy for Future Research Activity |
ロゼット・モードが現実の星で励起されるかどうか、また恒星内部の角運動量輸送にどのように寄与しうるかを、恒星振動の非断熱効果を考慮した数値計算に基づいて検討し、結果の詳細を論文として発表する。また、ロゼット・モードの構造に対する遠心力の効果を、解析的な計算と数値計算の両方に基づいて評価する。
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Causes of Carryover |
健康上の理由で海外出張が1件キャンセルになったため、その分の費用が未使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
旅費ないし論文投稿料として利用する。
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