2016 Fiscal Year Research-status Report
ロゼット・モードで探る恒星における振動と自転の相互作用の研究
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26400219
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高田 将郎 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 助教 (20334245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉尾 英行 東北大学, 理学研究科, 名誉教授 (10162174)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 恒星振動 / 恒星自転 / 恒星内部構造 / 脈動変光星 / 星震学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、自転する恒星において現れる特異な構造を持つ固有振動モード、ロゼット・モードについて、その構成要因を理論的に詳細に調べ、また恒星物理学や星震学における意義を検討することを目的とする。平成28年度は、恒星振動が現実の星で励起される可能性を検討し、またモードが構成される場合に遠心力の果たす役割について検討した。さらに、赤色巨星でロゼット・モードが構成される可能性を検討するため、その土台となる漸近理論を展開した。 平成27年度までの研究で、ロゼット・モードは、浮力が復元力としてはたらく低周波数領域において出現し、自転がなければ独立していた水平方向の振動パターンの異なる複数のモードが、周波数が近いためにコリオリ力によって相互作用することで生じるという機構が明らかになった。また、恒星進化計算に基づくモデルを用いて、ロゼット・モードが長周期振動B型星で励起される可能性を検討し始めた。平成28年度は、この励起問題の検討をさらに推し進め、恒星進化モデルの様々なパラメータの場合を検討し、HR図上のどの領域でロゼット・モードが現実に励起されうるかという計算を進めた。一方で、これまでは自転の振動に及ぼす効果としては、コリオリ力だけを考えてきたが、詳細な数値計算との比較により、さほど周波数の低くない場合には、ロゼット・モードの構成には遠心力も影響するという示唆が得られた。そこで、遠心力の効果も摂動論として考慮するように定式化を拡張した。さらに、主系列星付近のみならず、より進化の進んだ赤色巨星においてもロゼット・モードが構成される可能性を検討した。これは、赤色巨星では中心密度の上昇にともなって、振動周波数のスペクトルが密になり、自転によるモード間の相互作用が起こりやすくなるからである。特に検討の土台として、赤色巨星の振動の漸近理論を詳細に展開した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れの原因は、計画立案時には考慮していなかった遠心力の効果が重要であることがわかったことである。このため、この効果を適切に考慮すべく、従来の解析を拡張し、解析的な計算方法(摂動論)で遠心力の効果を取り扱うことにした。ところが、この計算は(コリオリ力のみの場合に比べて)大変複雑になり、さらに先行研究の関連する計算結果との整合性を検討するのに予想以上に時間が掛かっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の3つの課題について推進する予定である。(1)恒星進化計算に基づく、現実の星における励起の問題については、大体の結果が出ているので、論文としてまとめる。(2)また、遠心力の効果については、摂動理論の解析を完成させ、先行研究と比較し、さらに数値計算とつきあわせることで、遠心力の効果を明らかにする。(3)さらに、赤色巨星の場合にロゼット・モードが構成される可能性について検討を続ける。
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Causes of Carryover |
論文投稿(恒星進化計算に基づくロゼット・モードの励起の問題についてのもの)が遅れたため、その掲載料が未使用額の大部分である。また、他の財源が見つかったため、予定より旅費が掛からなかったことも未使用額が生じた原因である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文掲載料や少額備品の購入のために使用する予定である。
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