2015 Fiscal Year Research-status Report
星間分子探査に備えた分子・分子イオンのテラヘルツ域回転遷移周波数の精密測定
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26400226
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
松島 房和 富山大学, 理工学研究部(理学), 教授 (40142236)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森脇 喜紀 富山大学, その他の研究科, 教授 (90270470)
小林 かおり 富山大学, その他の研究科, 准教授 (80397166)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 遠赤外分光 / 量子エレクトロニクス / 星間分子 / 電波天文 / テラヘルツ |
Outline of Annual Research Achievements |
近年の電波天文学はテラヘルツ(遠赤外)領域へと進展しつつあり、ALMAをはじめとする国際観測プロジェクトがいくつも稼動している。これを支える実験室の高精度分光研究の役割は大きい。そこで、本研究では世界唯一の波長可変コヒーレント光源型遠赤外分光計を用いて、主に星間分子として重要な分子・分子イオンについて、それらの回線遷移周波数を数十kHzの高精度で測定する。 27年度は以下の2つのテーマについて成果があった。 (1)HCO+イオンとその同位体イオンの分光測定を一通り終えた。HCO+イオンは星間イオンとして重要であり、その回転遷移周波数の精密測定が必要である。すでに前年度までに、炭素12、水素(H,D)のHl2CO+,Dl2CO+、さらに炭素13、水素(H,D)のH13CO+,Dl3CO+について測定が進んでいたが、今年度は残りの酸素18、水素(H,D)のHC18O+,DC18O+について測定を進めた。これによりHCO+の分子イオンについてはひととおり測定がでそろったので、分子定数などを各同位体ごとに改善しまとめることができた。成果については国際会議や国内の会議で発表し、また、論文を起草中である。 (2)D2H+イオン分子の回転遷移周波数測定。当初予定していたCH+イオンの測定に先立って、米国JPL研究所の要請で至急にD2H+イオン分子の回転スペクトルを試すことになった。負グロー域拡張型の試料放電セルを使った実験により、2本のスペクトル線について確認できた。このうちの1本は今回新たに測定できた線であり、早速その測定周波数値を用いた解析がJPLでおこなわれた。このあと検出器が故障して年度の残りの期間を修理に費やしたので、予定していたCH+イオンの測定は最終年度へ持ち越すことになった。また、今回測定したD2H+のデータを取り入れた論文がJPLのグループによってまとめられつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していたHCO+の分光測定が完了したこと、および、これまでなかなか検出できないで長年の懸案事項であったD2H+イオンの測定ができたことで、まずは成果があったと判定している。 ただし、11月後半になって、これまで30年近く動作していた遠赤外検出器がこわれたことから、その状況調査、修理などに時間を費やし、年度末まで測定が中断したのは不測の事態であった。最悪の場合検出器が直らなければ今後の計画が中絶するところであったが、幸い検出器は科研費からの出費で無事直ったので、D2H+イオンの継続とCH+イオンの測定は最終年度へ持ち越すことにした。
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Strategy for Future Research Activity |
28年度は本研究の最終年度であるとともに、定年を控えた申請者の研究生活の最終段階でもある。これまで、懸案になっていたCH+などの基本的な星間分子イオンを中心に、できるだけこれまでの研究が完結するように測定を進めてゆく。 さらに、本研究の分光装置は、世界でも富山大学にしかない遠赤外域の高精度な分光測定器であることから、継続して研究がなされるよう、後継の人材に対しても教育指導をしてゆきたい。
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Causes of Carryover |
検出器故障修理が年度の終盤までかかり、残額が不確定であったこと、および残金があったとしても小額であったので、次年度の物品購入にあわせて使うようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品等の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)