2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400228
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
上田 佳宏 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10290876)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 活動銀河核 / ブラックホール / X線 |
Outline of Annual Research Achievements |
活動銀河核フィードバックのパワーを担う、相対論的ジェットや降着円盤風の放出には、ブラックホール質量に依らない、共通の物理機構が働いていると考えられる。特に、ブラックホールへの質量降着率が極めて高く、エディントン光度に相当する「臨界降着率」に近付いた時に、降着流と放出流がどのような振舞を示すかということは、極めて重要な基本問題である。そこで、近傍銀河に存在する「超高光度X線源」の可視スペクトルの研究を進めた。その結果、これらの多くが、銀河系内の唯一の定常ジェット天体SS 433と同じスペクトルの特徴を示すことを発見した。この事実は、超高光度X線源が大量のガスを円盤風として周囲に吹き出している「超臨界降着流」状態にあることを強く示唆するものである。さらに、銀河系内ブラックホールX線連星・白鳥座V404星のアウトバーストの可視・X 線データを解析し、降着円盤内側での熱的不定性が、従来考えられていたよりもずっと質量降着率の小さいときにも起こり得ることを指摘した。これらは結果は、それぞれNature Physics誌およびNature誌に報告した。
活動銀河核フィードバックの宇宙論的進化を理解するためには、遠方宇宙における活動銀河核の無バイアス探査が欠かせない。長年来、共同研究者と協力して進めてきた「すばる」XMMニュートンディープサーベイで見つかったX線天体の多波長同定のカタログをまとめ、PASJ誌に出版した。これは今後の研究の基礎データベースとなる。さらに、これまでに行なわれてきた硬X線探査の結果のレビュー論文を執筆し、Proceedings of Japan Academy Series B誌に報告した。これらの結果を中心に、セルビアおよびイギリスで行なわれた国際会議で招待講演を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高い質量降着率下にあるブラックホールの研究は、活動銀河核フィードバックの物理機構の理解に欠かせないものである。また、X線多波長深探査のカタログ製作は、その宇宙論的進化に研究を進める上で基礎となる。本年度は、着実にこれらの研究を遂行することができたと考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
「すざく」やNuSTAR衛星の大規模データを用いて、活動銀河核のX線スペクトルの統一解析を進め、ジェットの有無による中心核構造の違いや、その光度依存性を解明する。また、ALMA望遠鏡やX線衛星を組み合わせた多波長ディープサーベイを進め、高赤方偏移での活動銀河核フィードバック現象を調査する。
|
Research Products
(14 results)