2015 Fiscal Year Research-status Report
巨大ブラックホールの宇宙論的進化にみられる超臨界降着効果
Project/Area Number |
26400229
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
嶺重 慎 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70229780)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | ブラックホール天文学 / 降着流 / アウトフロー / 輻射流体力学 / 輻射輸送 / パルサー / X線分光 / 一般相対性理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、当初予定の3項目に加え、研究進展に伴って派生した新規1項目を加えて研究を推進した。 1.ブラックホール成長初期の連続的超臨界降着:(1)初年度に引き続き、計算ボックスを10~30倍拡げた降着流の輻射流体・輻射磁気流体シミュレーションを実行し、周囲のガスへのメカニカル、および輻射フィードバックによるエネルギー流入を定量的に明らかにした。特に、円盤面方向からみたときの観測量を計算し、最近発見が相次いでいる超高光度ソフトX線源(ULS)に合致することを見出した。(2)輻射フィードバックによる物質の化学組成(電離状態)変化を調べるため、新しくサブルーチンを導入し、1次元テストコードに組み入れてテストを行い、正常な動作を確認した。 2.バイナリーブラックホールへの超臨界降着:メッシュ法シミュレーションを実行し、二つのブラックホール近傍のガス流構造を明らかにした。論文にまとめつつある。 3.降着流とアウトフローの観測可能性:(1)高光度降着流からのアウトフローは、X線領域で青方偏移した吸収線として観測される。鉄などの重元素によるX線吸収スペクトルの計算の準備を進めるべく、既存のMONACOコードを使わせてもらってテスト計算に着手した。(2)ブラックホールに落ちこむガスブロッブの運動と輻射光度変動からブラックホールスピンを測定する、まったく新しい方法を考案した。テスト計算をしたところ、観測誤差を考慮しても有力な方法であることを結論した。系統誤差の評価については今後の課題である。 4.(新規)超臨界パルサー:関連した話題として、強磁場中性子星の降着コラムへの超臨界降着流について、輻射流体シミュレーションを行った。ブラックホールと異なり、降着コラム側面から多量の輻射が流れ出ることにより、ブラックホールよりも数段高い輻射光度が再現されること、見る角度により大きく見かけの光度が変わることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
流体シミュレーション部分については、ほぼ予定どおりの進捗状況である。一方でアウトフローの観測可能性の研究においては、MONACOコード開発の小高氏との共同研究が思ったより速く進展した。また超臨界パルサーの発見に即応して、中性子星への超臨界降着なる新規課題を追加してシミュレーションを実行し、観測を説明する結果を得た。これらの点において当初計画以上の進捗を得た。一方で、バイナリーブラックホールについては、論文執筆にむけたまとめの議論は行ったものの新規計算は滞っている。これらの点を総合的に判断し「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
超臨界降着にともなう輻射フィードバック効果、超臨界パルサー、X線分光に向けたアウトフローの超精密スペクトル線計算、バイナリーブラックホールへの超臨界降着、いずれも重要な課題であり、粛々と研究を進める。現時点で、研究推進に支障となる問題は発生していない。
|
Research Products
(10 results)