2014 Fiscal Year Research-status Report
連続的R対称性をもつ超対称模型によるヒッグス粒子と暗黒物質の研究
Project/Area Number |
26400243
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中野 博章 新潟大学, 自然科学系, 准教授 (60262424)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
瀬戸 治 北海学園大学, 工学部, 准教授 (40547741)
谷本 盛光 新潟大学, 自然科学系, フェロー (90108366)
山下 敏史 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90622671)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 素粒子論 / 超対称性 / ヒッグス粒子 / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は、Dirac型ゲージノを含む連続的R対称性をもつ最小超対称模型(最小R超対称模型)に、一重項場を追加してヒッグスセクタを拡張した模型をとりあげ、ヒッグス粒子の質量として125GeVが再現できることを示し、さらに、ヒッグス崩壊過程や暗黒物質の探索を通じた検証可能性を探るものである。 特に初年度である26年度は、連続的R超対称模型のくりこみ群を用いた解析を重点的に行い、一重項場や随伴表現場とヒッグス場の間の湯川結合定数が統一スケールまで強結合にならない条件(trivialityの制限)から、低エネルギーの結合定数の上限をひょうかした。ヒッグス粒子の質量に関しては、有効ポテンシャルの方法ではなく、くりこみ群に基づく簡便法を用いた計算を行い、ヒッグス質量の実測値が再現可能なパラメータ領域を同定した。一重項場を含む拡張模型では、軽いスカラー粒子(擬モジュライ)が存在するが、ヒッグス粒子が擬モジュライに二体崩壊する過程に対して、ヒッグスの不可視崩壊幅からの制限を考察した。また、グラビティーノが暗黒物質になる可能性を吟味するため、擬モジュライやグラビティーノの崩壊過程について、予備的考察を行った。 以上の予備的結果のうち、ヒッグス質量や結合定数の非自明性に関するものは、第42回北陸spring school(金沢市、基礎物理学研究所地域スクール)、宿泊型国際研究集会SI2014(富士吉田市)にて報告した。また、SI2014では、分担者と情報収集や研究打合せを行った。ヒッグス崩壊幅に関する予備的結果は、日本物理学会2014年秋季大会(佐賀大学)、松江現象論研究会(島根大学)にて報告した。さらに、ディラック型ゲージノに基づく超対称模型に包括的な報告を、大阪大学における研究集会、および、日本物理学会第70回年次大会(早稲田大学)における企画講演として行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一重項場を含めて拡張した連続的R対称模型におけるヒッグス粒子の質量について、くりこみ群の方法に基づき、ヒッグス質量の実測値を再現できるパラメータ領域を見出せた。このことは、暫定的ながらも定量的結果が得られたことを意味し、一定の成果である。また、ヒッグス粒子から軽いスカラー粒子(擬モジュライ)への崩壊幅についても、予備的結果が得られている。 一方、暗黒物質については、連続的R対称性の破れの効果を取り入れることで、軽いグラビティーノが有力候補となる。また、一重項場を含むR不変な拡張ヒッグス模型では、ヒッグスセクタで超対称性の自発的破れが実現し、軽いフェルミオン(擬ゴールドスティーノ)が現れる。このような状況において、グラビティーノ暗黒物質の矛盾ない模型になっているか否かは依然として検討課題として残されているが、擬モジュライが擬ゴールドスティーノ二体に崩壊に寄与する新たな過程を見出し、擬モジュライに関する宇宙論的問題が回避できることがわかったことは一定の前進である。現在は、同様の過程や別の相互作用を通じて、グラビティーノが崩壊する可能性を検討し、模型に対する制限や検証可能性を考察中である。
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Strategy for Future Research Activity |
一重項場を含めて拡張した連続的R超対称模型におけるヒッグス粒子の質量について、これまではくりこみ群を用いた簡便法に基づいた計算を行っていたが、そこで得られた予備的結果をより高精度の計算法を用いて確認する。その上で、現在までに得られた成果のうち、特にヒッグス粒子の質量およびヒッグス粒子の軽いスカラー粒子への崩壊幅に関する成果を論文の形にまとめる。 グラビティーノが暗黒物質になる可能性については、擬モジュライおよびグラビティーノの寿命を見積もり、矛盾のない模型が得られるか否かを検討する。特に、拡張ヒッグスセクタにおける様々な湯川結合定数による効果を検討する。 また、大統一模型への埋め込みやニュートリノ混合、さらに、ディラック型ゲージノの模型におけるレプトン数非保存過程などについても検討を進める。 ディラック型ゲージノの理論については、随伴表現場の質量項の起源に関して、最近新たな可能性が指摘されているので、それを取り入れる可能性も検討する。
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Causes of Carryover |
初年度(26年度)に備品としてPCおよび計算ソフトを購入予定であったが、本格的な計算が次年度以降に持ち越される見通しであることと、研究打合せおよび 予備的成果の発表のための旅費が増加し当初の予定を超える見通しとなったため、PCおよび計算ソフトの購入を延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
26年度に購入予定であった備品(PCまたは計算ソフト)を購入する。
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