2014 Fiscal Year Research-status Report
数値計算によるゲージ理論の研究とその量子現象への応用
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26400246
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
一瀬 郁夫 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20159841)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子シミュレーション / 極低温原子系 / 格子ゲージ理論 / 超固体 / 計算機実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題の目的は、近年多くの注目を集めている量子多体系の1つである極低温原子系に注目し、その多様性、操作可能性を用いて、これまで提案されてきた多くの量子多体系と類似した系の実現とその相構造等の研究を行うことにある。今年度はその中で特に極低温ボソン系を用いて格子ゲージ理論に対応する量子シミュレータを構築し、その相構造、特に系の時間発展を通じて現れるダイナミクスを解明することに成功した。また、磁気双極子を持つ原子系により実現される長距離相互作用により、系がどのように影響を受けるのかを調べることが出来た。 まず、磁気双極子を持つ2成分のボソン原子を正方格子のサイトに配置する方法を考案した。具体的にはその成分ごと異なる向きに双極子を配置することで、長距離密度相互作用を生みだし、結果として興味深い相構造を示すことを見出した。手法は我々が開発した拡張されたMonte-Carlo シミュレーションによる。 次に、光格子上に配置された2成分ボソン系に対して、ランダムな成分間転移を与える効果を考慮することにより、新しい秩序が生成されることを見出した。 最後に、正方格子のリンク上にボソン原子を配置し、その超流動性を用いてボーズ凝縮体の位相を格子ゲージ理論のゲージ場と見なす可能性について調べた。具体的な実験設定およびGross-Pitaevskii 方程式を解析することにより、格子ゲージ理論の動的な振る舞いを調べることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、格子ゲージ理論の中で重要な位置づけをもつゲージ・ヒッグスモデルを極低温原子系で構築できることを示し、Gross-Pitaevskii 方程式等を数値的に解くことにより系の動力学をシミュレートすることに成功した。また、物性理論等において興味を持たれている種々の現象、例えばランダムなラビ結合を2成分原子間に導入することにより新たな秩序相の出現を示すなど、今後の発展に大きな期待を持てる結果を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの成果を受けて、ゲージ・ヒッグスモデルの量子シミュレーションの詳細なる構築と、実際に実験においてどのように実現されるかについて検討し、提案を行う。 また、近年特に注目されているhonycomb 格子上に配置された極低温原子系について、解析的および数値的な手法を用いて研究を進める。この系は量子ホール効果と密接に関連し、位相的絶縁体相、位相的超流動相の出現機構に対して有益な知見を与えると期待される。
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Causes of Carryover |
本研究計画においては優れた性能を持つ計算機が重要な役割を果たす。27年度の基金と合わせてより優れた計算機を購入予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のように27年度の基金と合わせてより良い計算機を購入することを計画している。
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