2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400248
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
大野木 哲也 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70211802)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 格子ゲージ理論 / グラディエントフロー |
Outline of Annual Research Achievements |
格子ゲージ理論において演算子の繰り込みは重要な問題である。とくに核子の電気双極子能率の評価には次元4、次元5、次元6の演算子が寄与しうることが知られており、それぞれの寄与を区別することは新しい物理の検証に極めて本質的である。格子上では紫外発散のハードカットオフにともなう演算子混合が生じるため、上記の作業は極めて困難である。 グラディエントフローは発散のある場の理論の裸の場から仮想的な時間を導入し、場を拡散方程式による時間発展させるものである。非可換ゲージ理論の場合には発展させた場で作られる任意の物理量が有限であるという非自明な事実が Luscher と Weisz によって発見され た。この性質をもちいてゲージ理論の演算子の繰り込みについての新しい手法の開発などさまざまな応用が進んでいる。近年の研究でグラディエントフローで発展させた場を用いて発散を上手く制御し、例えばこれまで困難であった格子上でのエネルギー運動量テンソルという複合演算子の定義とそれを用いた数値計算に成功している。グラディエントフローの理論的研究を進めることは複合演算子の発散の制御に極めて有望で更なる理論的研究が望まれている。 大野木は青木慎也、菊地健吾とともにグラディエントフローを2次元のO(N)非線形シグマ模型に適用しラージN極限での厳密解を構成した。これによりゲージ理論と同様にグラディエントフロー方程式で発展させた場で作られる2点関数については非摂動的に有限であることを示した。さらに大野木は青木、菊地とともに2+1次元空間の計量を発展させた場による誘導計量として定義される計量を厳密にもとめた。その結果、β関数の固定点にあたる紫外極限と赤外極限で漸近的にAdS時空が現れることを明らかにした。これはAdS/CFT対応との関係を示唆する興味深い結果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2次元のO(N)非線形シグマ模型におけるグラディエントフローはラージN極限で解析的に解けるモデルである。そのため、さまざまなアイディアを試すことができる。今年度はこの模型におけるinduced metricを用いて2+1次元時空の計量を定義する提案を行った。その結果、場の理論の固定点に対応する紫外極限および赤外極限において時空がAdS空間になることを発見した。これは研究計画、当初予期しなかった興味深い進展である。
|
Strategy for Future Research Activity |
グラディエントフローを用いた場の理論の研究において、予想外の成果が得られたので、今後はさらにそれを押し進め、1/N展開の高次補正やより一般的な場の理論への拡張を試みる。これにより発散の制御のメカニズムやAdS/CFT対応のあらたな知見をえることを目指す。
それと同時に当初の目的である核子の電気双極子能率の演算子の繰り込みへの応用も行う。
|
Causes of Carryover |
招聘する予定だった、海外の共同研究者が別の予算で大阪大学に来訪したため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は国債会議を含む海外出張を予定している。
|
Research Products
(4 results)