2015 Fiscal Year Research-status Report
ILCにおけるトップ・クォーク質量と湯川結合定数の測定
Project/Area Number |
26400255
|
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
清 裕一郎 順天堂大学, 医学部, 准教授 (60571338)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | トップ・クォークの質量決定 / 量子力学 / QCD有効理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
実施計画にあったように、平成27年度は「QCD3次補正の計算とコンピュータ・プログラムの開発」を行ってきた。これまでは共同研究中のグループ内で使用する目的で開発されたきた閾値付近でのトップ・クォーク対生成のマスマティカ・コードを、一般公開して実験家や他の研究者にも使ってもらえるように、C++言語のコードへと書き換えた。また、このコードを使って、実験家がシミュレーション・スタディーを行うことも考えて、高速計算に十分対応できるようなプログラムとして開発を進めた。この成果は、理論計算やテクニカルな数値計算の手法の解説と合わせて、論文として出版する予定である。
また、理論的な研究として、大きな崩壊幅を持つトップ・クォークに対する有効理論を調べた。閾値付近での重いクォーク対の生成断面積に対して量子補正を計算すると、紫外発散が生じることが知られているが、電弱相互作用を含めた有効理論を構築してこれらの発散を繰り込むことが可能であることを見出した。このメカニズムを詳細に調べて、QCD3次補正の計算に現れる繰り込みスケール依存性を相殺することが可能であることを示した。テクニカルな詳細を含め、本論文として原稿を執筆中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
閾値付近でのトップ・クォーク対生成の断面積を計算するC++コードが完成したことで、より現実的な実験的シミュレーション・スタディーを行うことが可能となった。これからは、実験家とも協力しつつ、トップ・クォーク質量決定の感度や、トップの湯川結合定数測定の感度などについてもシミュレーション・スタディーを行う予定である。また、大きな崩壊幅を持つトップ・クォークについての有効理論も詳細に調べられ、電弱相互作用まで含めた理論計算を系統的に取り扱う手法が確立された。今後は、様々な量子補正を入れた理論計算を系統的に取り扱うことが可能となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
QCD束縛状態に関係した困難な理論計算はほぼ完成し、ILC実験を想定したシミュレーション・スタディーを実行する段階に来た。トップ・クォーク対の生成断面積を計算するプログラムを利用して、ILC実験でのビームの特性等、現実的なシニュレーション・パラメータを用いた各種物理量の測定感度を調べたい。
|
Causes of Carryover |
日程調整などがうまくいかず、予算額をつかいきることができなかったが、平成28年度に必要となる物品費として利用する予定ができたので次年度使用額とした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
長時間のシミュレーションをコンピュータ上で行うために必要な、データ保存用の記憶媒体等を購入する予定。
|
Research Products
(5 results)