2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400260
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江澤 潤一 独立行政法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (90133925)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 場の理論 / トポロジー / 対称性 / トポロジカル荷電 / チャーン数 / 量子ホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
対称性は場の理論における最も基本的な構成要素である。一方でトポロジーの概念も場の理論で重要な役割を果たしている。最近は物性理論において対称性に保護されたトポロジカル相という概念が提出され、着目を浴びている。これは対称性があるときにはエッジ状態が存在するが、対称性が破れるとエッジ状態がなくなる状態である。つまり、対称性の存在とトポロジーが密接に関連した概念である。これを一般化し、対称性に保護されたトポロジカル場の理論の構築を試みている。具体的には場の理論に対称性が存在する場合に導かれるネーターの定理を拡張し、「対称性に保護されたネーターの定理」の導出を試みている。この際には「対称性に保護されたトポロジカル荷電」の定義が必須である。これは量子ホール効果を記述するトポロジカル荷電であるチャーン数を拡張する事により可能であると考えており、「対称性に保護されたチャーン数」によって特徴付けられる。これは対称性が存在する場合には量子化してトポロジカル数として振る舞うが、一端、対称性が破れるともはや量子化せず、トポロジカル数としての役割を果たさない量である。この為、対称性の存在に密接に関連したトポロジカル量である。更に、これを拡張する事により、「対称性に保護されたチャーン・サイモンズ・トポロジカル場の理論」構築を試みている。これは対称性に保護されたトポロジカル場の理論において電子場を経路積分によって消去する事によって得られる。対称性が存在する場合には独立なチャーン・サイモンズ・トポロジカル場の理論の直和に分解されるが、対称性が破れている場合には非対角項の存在によって 非自明な場の理論になる、と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対称性に保護されたトポロジカル場の理論の一般的構築を試みている。具体的ないくつかの例においては良く機能する事が既に分かっているが、一般的な原理としての確立までは至っていない。今までの研究とは全く違う分野に参入しており、具体的な成果にはもうしばらくかかりそうである。一方、従来から行っている二層量子ホール系の研究は着実に進展しており、原子核スピンが電子スピンに与える結果について結果が得られており、現在、実験との比較を行っている。これについては来年度の初めには論文として投稿可能な状態である。また、磁性体中のSkyrmion格子の南部ゴールドストーン・モードに関して初歩的な解析を終えており、数値計算などと比較して、低エネルギーの物理を明らかにし始めている。これも来年度中には論文として発表可能であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在の対称性に保護されたトポロジカル場の理論の構築を進めるとともに、確実に成果のでる内容も研究を行っていく。これは対称性に保護された場の理論は極めて奥が深く、短期間に成果のでるタイプの研究ではないためである。具体的には二層量子ホール系の研究と磁性体中のSkyrmion格子の低エネルギーの物理の研究を考えており、既に遂行中である。特に二層量子ホール効果における原子核 スピンの影響を量子ランジュバン方程式を用いて解析し、電子スピン緩和への影響を調べる。これは実験も進行中であり、実験家との緊密な連携の元に研究を遂行する。更に、Skyrmionは量子ホール強磁性で良く研究されている概念であるが、最近、磁性体中で実現され興味を持たれている。この系の南部ゴールドストーン・モードを導出し、低エネルギーの物理を明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
計画的に使用したが,最後に,端数が出てしまった.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
来年度の消耗品に繰り込んで使用予定である.
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