2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400260
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
江澤 潤一 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器研究センター, 客員研究員 (90133925)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | トポロジカル荷電 / トポロジカル励起 / 量子ホール系 / スカーミオン / 渦励起 / ゴールドストーン・モード / ワイル半金属 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、非可換空間上の物理現象として、二層量子ホ ール効果の研究を長年に渡って遂行してきた。昨年度に引き続き、二層の電子のスピンが傾斜して反強磁性結合する特有の相に表れるゴールドストーン ・モードと核子のスピンとの相互作用に関して理論的研究を行った。線形分散をもつゴールドストーン・モードが媒介する場合には、サンプル全体に渡ってコヒーレントな結合が実現し、核子スピンと電子スピンの結合効果は大きくなるというのが結論である。本年度は、この成果に基づき、核子スピンの緩和に関する実験結果を超放射類似現象として解釈する試みを行った。しかし、実験結果が十分でなく論文に纏めるには至っていない。 さて、本研究の主題は、「対称性に保護されたトポロジカル荷電とソリトン励起」の研究である。具体例として2次元ワイル半金属系を解析した。この系はミラー対称性によって保護された系である。半金属状態においてフェルミ面上に運動量空間渦励起が発生しているが、これはミラー対称性に保護されたトポロジカル荷電とソリトン励起の例とみなせる。ハミルトニアンは一次元のリング(空間S1)に値を持つ場で記述され、渦度はホモトピー群π_1(S1)で与えられる。この系に磁場をかけると、ミラー対称性が破れる。これに伴い、ミラー対称性に保護された運動量空間渦励起がどの様に変化するか解析した。磁場をかけると、ギャップが開くとハミルトニアンを記述する場は一次元リング(空間S1)から二次元球面(空間S2)へ変化する。これに伴い、系を特徴づけるホモトピー群はπ_2(S2)に変化することが分かった。これに伴う諸々の現象を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の目的は、対称性に保護されたトポロジカル荷電とソリトン励起の理論の構築である。当初の計画では、一般論の構築を目的としたが、現時点においては未だ具体例を探している段階である。対称性に保護されたソリトン励起は実空間には存在しないように思われる。現在、運動量空間トポロジカル・ソリトン励起の研究を開始した所である。
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Strategy for Future Research Activity |
最近、運動量空間における渦や磁気ソリトン励起が物性理論で着目されている。本年度開始した2次元ワイル半金属における運動量空間渦励起の解析を続行するとともに、3次元ワイル半金属における運動量空間磁気単極子ソリトン励起の研究を行う。さて、ワイル半金属は2重項フェルミオン系とみなせる。これを拡張した多重項フェルミオン系には高トポロジカル荷電をもつ運動量空間磁気単極子ソリトン励起が存在する。この系に磁場をかけミラー対称性を壊したとき、磁気単極子ソリトン励起がどのようになるのか具体的に解析する計画である。
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Causes of Carryover |
計画的に使用したが、最後に端数が出てしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の消耗品に繰り込んで使用予定である。
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