2014 Fiscal Year Research-status Report
QRPAを用いたニュートリノレス二重ベータ崩壊の原子核行列要素計算
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26400265
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
寺崎 順 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (50616430)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ニュートリノ / 二重ベータ崩壊 / QRPA / 原子核行列要素 |
Outline of Annual Research Achievements |
長年、標準理論で質量なしと仮定されてきたニュートリノに質量があるということがニュートリノ振動の実験によって確立し、現在その質量決定が物理学にとって重要な課題になっている。この決定のためのごく限られた方法のひとつであるニュートリノレス二重ベータ崩壊の原子核行列要素を計算することが本研究の目的である。原子核行列要素は我々の用いる準粒子乱雑位相近似(QRPA)、殻模型などで計算されたが、因子2から3というばらつきがあり、格段に精密な計算が求められている。 我々は、QRPAの準ボソンに対する真空という基底状態の定義を用い、この状態をあらわに計算することによって始状態と終状態から求めたQRPA中間状態の重複を計算した。ここが我々の方法の新しい点である。平成26年度には、この方法によるニュートリノレス二重ベータ崩壊の原子核行列要素が初めて150Ndから150Smへの崩壊について計算された。この過程でQRPA基底状態の規格化因子が原子核行列要素を顕著に小さくすることが明らかにされた。これは、QRPAにおいて今まで気づかれていなかった多体相関の機構の発見を意味する。ここが平成26年度における本研究の最も中心的な実績である。 我々はこの成果をフィジカルレビューCにて出版するとともに、精力的に国際ワークショップで口頭発表した。特に平成26年11月にドイツのダルムシュタットで開催されたワークショップでは特にこの課題の専門家たちが集まったが、その場で我々の新しい主張のほとんどの点に対し異議が出なかった。これは大きな成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要で述べたように、平成26年度には新しい計算による成果を上げ、論文および口頭の発表によって成果の広報を行った。よって本研究は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他の崩壊例での原子核行列要素計算を行う。また本研究が明らかにした新しい多体相関の機構をさらに確固にするため、二つのニュートリノ放出を伴う二重ベータ崩壊の原子核行列要素計算、陽子・中性子対エネルギー密度汎関数の導入などを行う。これらの計算の遂行にとって最も重要なことは計算資源割り当ての確保であり、平成27年度も国内外の超並列計算機利用プログラムに応募する。
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Causes of Carryover |
国際ワークショップ参加の際、旅費の先方負担があった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用分は、研究会またはワークショップ参加のための旅費、または計算機使用料に充てられる予定である。
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Research Products
(2 results)