2014 Fiscal Year Research-status Report
微視的効果を取り入れた原子核散乱の記述と原子核反応への応用
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26400270
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
延與 佳子 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40300678)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不安定原子核 / クラスター / 分子共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
28Si+4He, 16O+4Heなどの系での微視的なクラスター共鳴状態の計算を進めた。また、α粒子の崩壊幅および反応計算で必要なインプットとして、核表面でのαクラスター存在確率を近似的に求める計算方法を開発した。簡単な系で微視的に求めた換算幅振幅と比較し、近似が妥当であることを示し、この近似法を6Li+3Hクラスター共鳴状態へ適用した。 また、閾値近傍のクラスター励起状態およびクラスター共鳴状態に関して、クラスター重心運動の非局在化という現象について、量子力学的観点から考察を行った。クラスター励起・共鳴状態のエネルギーがクラスター崩壊の閾値近傍に近い場合、一般にクラスター非局在化が増大するが、実際の原子核系では芯原子核からの引力ポテンシャルと反対称化による斥力的効果、および、核表面のポテンシャル障壁によって非局在度合いは自明ではない。16O+αクラスター系においてαクラスター非局在化を解析し、非局在化は核表面より外側での量子トンネリングによって生じることを示した。ポテンシャル障壁の低い場合、αクラスターが遠方に染み出し、この領域では近似的にαクラスターのゼロ運動量状態(理想的な非局在状態)と見なせること明らかにした。 さらに、3αおよび4αクラスターの直鎖状態について、クラスター非局在化を評価するために、量子エンタングルメントを測る指標(EM:Entanglement measures)を導入した。EMは量子情報や物性系で多自由度系の相関(エンタングルメント)の強さを測る指標として近年利用されている量であるが、それを原子核系のクラスター非局在化という現象に適用し、クラスター重心の非局在化によって増大する4体相関が、EMの指標に敏感に反映されることを示し、EMがクラスター重心の非局在化を測る良い指標であることを一次元3αおよび4αクラスター系で具体的に示すことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
具体的な計算として、28Si+4He, 16O+4Heなどの系での微視的なクラスター共鳴状態の計算を進めている。また、α粒子の崩壊幅および反応計算へのインプットとして、核表面でのαクラスター存在確率が必要となるが、それについては、微視的波動関数とクラスター波動関数の重なりを計算することで近似的に求める計算方法を提案し、微視的に求めた換算幅振幅とよく対応することを16O+4Heに関する計算で確認できている。この近似的方法の考え方と具体的計算方法および、6Li+3Hクラスター共鳴状態への適用例については、学術雑誌に発表済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、クラスター励起状態の計算を進め、新しいクラスター共鳴状態の理論的予言を行う。例えば10B+α共鳴状態など、これまで理論的研究の進んでいない系も含め、系統的に研究を進める。これまで中心的に考察してきたαクラスターだけでなく、tクラスターなど多様なクラスターをユニットに検討していく。また、二核子対(pn,nn)を仮想的なクラスターと考え、その運動様式を考察するとともに、二核子対が発達した励起状態の理論的探索を行う。これらのクラスターの核表面での存在確率について、クラスターノックアウト反応やクラスター移行反応実験による観測が可能かという課題について、反応計算の理論家および実験家と密接に打ち合わせしつつ、検討を進める。
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