2014 Fiscal Year Research-status Report
中間子原子核束縛系で探るカイラル対称性と量子異常効果
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26400275
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
永廣 秀子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (10397838)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 中間子原子核 / カイラル対称性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、対称性を手掛かりとしてハドロンの多様な質量スペクトルを統一的に理解すること目的とした、イータ-プライム中間子の有限密度中における質量減少の実験的な実現に向けた理論研究である。この目的のため、中間子と原子核が構成する系に焦点を定め、そこから得られる有限密度中のハドロンの性質を、対称性の観点から記述することを目的としている。具体的にはイータ-プライム中間子と原子核の束縛状態を出来るだけ無反跳に近い形で生成し、原子核中での中間子の質量減少をピークもしくはスペクトラムの形で実験的に観測することで、UA(1)量子異常の振る舞い、及びカイラル対称性の部分的回復の情報を引き出す。 本年度は、まずイータ-プライム中間子と原子核を扱う、理論体系の強化を目的として、イータ-プライム中間子と核子の散乱について、チャネル結合の効果やバリオン励起状態との結合を取り入れ、詳細に議論を行った。そこでベクトル中間子と核子のチャネル結合が、イータ-プライムエネルギー領域において重要であることを示し、これらの効果を取り入れ核子散乱の理論的計算を行った。我々は、イータ-プライム中間子における特にシングレット成分と核子との相互作用により、非常に幅の狭いバリオン励起状態が生成されうることを示した。このバリオン励起状態は、そのパイ中間子-核子系への結合が非常に弱い事も示し、その結果、これまでのパイ核子散乱のデータでは観測されていない、新しい励起状態である可能性も示した。この励起状態は、原子核中においてはイータ-プライム中間子原子核束縛状態として観測されると考えられる。今後は、イータ-プライム中間子の吸収チャネルについても詳細に計算を行い、原子核中でのイータ-プライム中間子の振る舞い及び、その観測可能性について議論を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度は、小数系に於ける理論体系の強化として、イータ-プライム中間子と核子の相互作用についてチャネル結合の効果を取り入れ、二体散乱について評価を行うことが目的であった。成果として、ベクトルチャネルの効果を取り入れ、核子標的によるイータ-プライム中間子のパイ中間子による生成、イータ中間子のパイ中間子生成、K中間子の生成などの、実験データとの比較を行い、可能な相互作用の大きさを見積もることが出来た。成果として複数の研究会等において発表を行い、現在論文を作成中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、吸収効果を多体吸収にまで拡張し、理論的評価を行う。平成26年度に強化した理論体系をイータ-プライム中間子原子核に応用し、束縛系の観測可能性について評価を行っていく。また、崩壊粒子の同時測定により実験的なバックグラウンドの減少可能性について議論を行う。
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