2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400279
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
河野 宏明 佐賀大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80234706)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 格子量子色力学 / 中性子星 / バリオン数 / アイソスピン / 虚数化学ポテンシャル / 現象論模型 |
Outline of Annual Research Achievements |
有限実アイソスピン化学ポテンシャルと虚数クォーク数化学ポテンシャルの両方ある場合の格子量子色力学(格子QCD)の計算を行った。まず、ゲージ配位の生成を行い、それを用いて物理量の期待値を計算した。計算した量は、プラケット、ポリヤコフループ、クォーク数密度およびアイソスピン数密度である。アイソスピンの化学ポテンシャルが大きい場合は、予想した以上にゲージ配位の生成の計算に時間がかかることがわかり、計算をとりあえずクォーク数密度等の絶対値が大きくなる高温の場合に絞った。実化学ポテンシャル領域への直接外挿はまだ行っていないが、ポリヤコフループを伴う南部・ヨナラシノ(PNJL)模型による解析を行い、高温ではこの模型で格子QCDの結果のうち、ポリヤコフループ、クォーク数密度およびアイソスピン数密度がよく説明できる事がわかった。(日本物理学会で発表。なお、プラケットに関しては、PNJL模型では計算ができない。)同時進行で、格子QCDの結果解析に使うPNJL模型の実効性の点検および改良・拡張などの研究も行い、その結果を論文にまとめた。また、2カラー格子QCD計算の場合の解析も行い、実領域への外挿およびPNJL模型の有効性を確かめ、現在計算している3カラー格子QCD計算の解析に際して予想できる問題点などを整理した。一方、アイソスピン化学ポテンシャルが大きくなると、予想以上にゲージ配位の生成の時間がかかるため、π中間子凝縮の出るような領域の計算は、まだ行えなかった。この領域の計算には、格子QCDの計算プログラムの大きな改良が必要になりそうなので、ひとまず計算を後回しとして、プログラムの改良法を検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
π中間子凝縮のない場合の格子量子色力学(格子QCD)計算については、ゲージ配位の計算に予想以上の時間がかかる事がわかったが、おおむね順調に計算が進行している。計算時間を節約するため、とくにアイソスピン数密度やクォーク数密度の絶対値が大きい領域に計算資源を投入し、その領域での計算はほぼ終了しつつある。また、格子QCD計算を解析するためのポリヤコフループを伴った南部・ヨナラシノ(PNJL)模型の実効性の点検や改良・拡張については、順調に進行しており、ここで計算する格子QCD計算の結果を解析する準備はほぼ整ったといってよい。まだ、予備的な段階であるが、PNJL模型によって、高温での格子QCDの計算結果のうち、ポリヤコフループ、クォーク数密度およびアイソスピン密度がよく再現できることが明らかになってきた。一方、アイソスピン数化学ポテンシャルが大きく、π中間子凝縮が発生するような領域の計算は、現行のプログラムを微修正しただけではうまくいかない事がわかり、プログラムにかなりの修正が必要であることがわかった。このプログラムの修正には、かなり時間がかかりそうな予測であるので、この領域の計算はひとまず後回しにしている。また、物理量のうち、ここで使用しているウィルソン・フェルミオンでは計算の難しいカイラル凝縮の計算も行っていない。以上のような理由から、進捗状況はやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、π中間子凝縮の起こらない領域での配位の生成の計算を完了し、それを用いた物理量の計算を行い、その計算結果の解析を行う事を優先に行う。解析においては、現在おこなっているポリヤコフループを伴った南部・ヨナラシノ模型による現象論的解析だけでなく、解析関数を仮定した外挿も行う。解析に使用する現象論模型の有効性の点検・改良等も今まで同様に引き続き行う。解析関数としてはいくつかのものを使用してみて、よりよいものを探す。解析する物理量は、当面の間、ポリヤコフループ、クォーク数密度およびアイソスピン数密度とし、カイラル凝縮については、計算方法を検討する。上記の目標がほぼ完了した時点で論文を作成する。また、論文作成と並行して、後回しとしたπ中間子凝縮の起こるような領域での計算方法やカイラル凝縮の計算方法について検討し、それらの問題点の早期の解決を図る。なお、研究の途中の適当な段階においては、適宜学会などで発表し、研究の成果についての報告を行う。
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Research Products
(4 results)