2014 Fiscal Year Research-status Report
J-PARCステライルニュートリノ探索用検出器開発研究
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26400286
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古田 久敬 東北大学, ニュートリノ科学研究センター, 研究支援者 (50467023)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 背景事象測定 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、J-PARC MLFで現在計画中のステライルニュートリノ探索実験で、本検出器設置候補地点における背景事象測定(特にビーム起源及び宇宙線起原高速中性子事象の測定)を実施し、測定結果を基にMCスタディを行い、本実験用検出器デザインを確定させることである。 特に26年度は、東北大学で開発したGd入り液体シンチレータ検出器を用いて実測を行い、MCスタディにより現在の検出器デザインにおける背景事象量を見積もること、また実施の際に宇宙線VETOシステムの開発が必須であったため、システムの開発も行うことであった。 予定通り本検出器設置候補地点における背景事象は実施され、MCスタディによりビーム起源及び宇宙線起原高速中性子背景事象の見積りを行うことができ、J-PARC PACのためのstatus report (arXiv:1502.02255)にまとめられ、さらに、現在PTEPの執筆中の論文(arXiv:1502.06324)にもまとめられた。 しかしながら、本検出器設置候補地点であるMLF3Fでは、安全上の観点から、背景事象測定実施当時は、危険物である液体シンチレータを入れることが難しかった。そこで、500kgのプラスチックシンチレータ検出器に変更し、さらに、その際やはり全体を囲む宇宙線VETOシステムの開発が必要であったため、検出効率99.5%のシステムを開発し、測定を実施することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記した通り、26年度の研究計画は、東北大学で開発しているGd入り液体シンチレータを用いた、本実験用検出器設置候補地におけいる背景事象測定の実測及び、実測を基にしたMCスタディにより現在の本検出器デザインにおける背景事象量の見積りをすることであったが、これに関しては予定通り26年度中に達成できた。 その際測定に必須だった宇宙線VETOシステムの開発も予定通り行い、背景事象測定でもデザイン通りのパフォーマンスを出すことができた。 ただ上述した通り、予定していたGd入り液体シンチレータではなく、プラスチックシンチレータで測定を行う必要があった。東北大学が所有する原子炉モニターは、中性粒子(ガンマと中性子)の識別が可能であるのに対し、使用したプラスチックシンチレータでは粒子識別はできなかったため、特に現場で測定されたものは、宇宙線起源ガンマと中性子の総量であった。そのため、代替案として、東北大学での実測結果から割り出した宇宙線起源ガンマと中性子の比率を使って中性子量の算出を行った。宇宙線起源高速中性子に関しては、今後、追試の測定を行い、現場での実測により今回の結果を保証する必要ある。 以上の経緯から、事故点検による評価を2の「おおむね順調に進展している」にした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず上述した通り、粒子識別可能な検出器で宇宙線起源ガンマと中性子の比を本検出器設置候補地点で実測する必要があるため、小型の粒子識別可能な液体シンチレータを用いて実測をする。 また研究計画でも書いた通り、実測の結果、宇宙線起源高速中性子量を100分の1程度まで落とす必要があることが分かった。そこで、粒子識別可能なGd入り液体シンチレータの開発をし、検出器に実装する必要がある。そこで、残り2年間で、粒子識別可能な波形弁別能力を実装したGd入り液体シンチレータのR&Dを行う。具体的には、Gdを安定な状態で実装できることが分かっているリニアアルキルベンゼン(LAB)を溶媒として使用したものを開発する。しかし、LABは波形弁別能力が乏しいため、ナフタレン等の物質を添加することで、波形能力の向上を目指す。さらに、その測定結果を本実験用検出器のシミュレータに実装し、必要な性能が出ているか常時確認する。 また背景事象測定の結果から、本実験検出器におけるシールドを工夫する必要があることが分かったため、実測により算出した背景事象量を使ったMCスタディにより、シールドデザインの検討を行う。 残り2年間で最終的に検出器デザインを確定する。
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Causes of Carryover |
ほぼ予定通り使用したが、わずかに残った。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
Gd入り液体シンチレータ開発用の試薬を購入する予定。
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