2014 Fiscal Year Research-status Report
国際リニアコライダーのための振り子型陽電子源標的の開発
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26400293
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 徹 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (50253050)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 陽電子源 / 有限要素法 / 国際研究者交流(中国,スイス) / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際リニアコライダー(ILC) の技術要素のなかで,高強度陽電子源は高ルミノシティーを達成する鍵となる重要な項目である。高強度陽電子源の開発では,陽電子生成標的の熱破壊の問題の克服がその鍵で有り,ILC の基本設計では,アンジュレーター方式と呼ばれる新しい方法を採用している。この方法の技術開発は精力的に行われてきたが,なお陽電子生成標的部に開発要素が残っている。本研究は,アンジュレーター方式のバックアップとなる従来型の陽電子源を開発し,ILC の実現を技術的側面からより確実なものとすることを目的とし,そのための陽電子源標的を,標的と補角部設計と熱負荷計算の両面から検討し,従来型標的の設計を行う。 平成26年度は,陽電子生成標的における熱負荷とそれによる標的への影響,陽電子捕獲部の石器,振り子標的の設計検討,を平行して行った。 熱負荷の計算においては,陽電子生成標的として想定しているタングステン中に電子線を入射した場合の熱損失とそれによる圧力の計算方法の開発に着手した。この計算においては有限要素法による数値計算が不可欠である。そのため,数値計算の専門家である中国高能物理学研究所の研究者と陽電子源開発に深い経験をもつ欧州原子核研究機構の専門家との共同研究を行うことが重要であると判断し,本研究費において,招聘し共同研究を開始した。陽電子捕獲部についてはシミュレーションによる検討を行い,その設計に目処をつけた。陽電子標的の開発に関しては,平成24年度までに別経費で行って来た開発研究をもとに,現状の試作器の問題点を検討した結果,標的周辺を高真空に保つためのベローズの耐久性が課題であることを見いだし,その改良方法について検討を行った。 以上の点について,平成26年9月に一関市で開催された陽電子源開発に関する研究会などで,経過を発表し,専門家との議論を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成26年度の目標の内,標的における熱負荷の計算については,国際共同研究を開始した。まだ結果を得るには至っていないが,ほぼ順調な進展を見せている。 陽電子捕獲部設計については,入射電子の形状,標的における陽電子生成と後段の加速器構成まで含んだシミュレーションを行い,具体的な設計条件における陽電子源の性能を見積もることができている。 上記2点については,当初の計画通りの進捗がみられる。 その一方で,改良型陽電子標的について,平成26年度中に設計と試作を行う予定であったが,これまのでの経験を踏まえ,大規模な改造も視野に入れて検討を行っている。そのため当初の予定よりも遅れ,平成27年度に試作を行うことを目標にしている。
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Strategy for Future Research Activity |
標的の熱負荷の計算については,国際共同研究を推進し具体的な計算と検討い発展される。そのために,本年度も中国高能物理学研究所の研究者を招聘する予定である。 陽電子捕獲部の設計においては,シミュレーションによって見積もられた結果を実機において,実現する具体的な検討に発展させる。特に陽電子標的直後のAMD(断熱整合器)の具体的な設計を行うため,中国高能物理学研究所のおよびロシアブドカー研究所の研究者と共同研究を開始する。 改良型陽電子標的においては,特に課題となっている,真空仕切り部品(ベローズ)に大型のものを採用し,それに合わせて全体の設計を見直す作業を行う。本年度中の試作器作成が目標である。
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Causes of Carryover |
平成26年度は,改良型陽電子標的の試作として,物品費18,800,000円,および技術的検討のために旅費700,000円の執行を計画していた。 実際の計画進行において,特に耐真空仕様の設計に関して、大規模な改造も視野に入れて検討を行っため,試作器の製作は行わず,少額の真空部品など260,280円の執行であった。一方で,共同研究推進のため海外からの研究者の招聘を行うなど,旅費等で712,000を執行した。 以上の結果,間接経費を除く当初経費2,400,000のうち執行分976,439円を除く,1,423,561円差額にを平成27年度使用額とした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成26年度経費の内,平成27年度に使用するものは改良型陽電子標的の試作に関するものである。 平成27年度は,平成26年度から行っている試作器の設計検討を行い,本年度中に試作器の製作を行うことを目標としており,平成26年度の繰り越し額はこれに使用する。
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