2014 Fiscal Year Research-status Report
キャリア注入による高結晶性有機半導体薄膜の電子状態制御と機能開拓
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26400315
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田中 久暁 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50362273)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 有機トランジスタ / 導電性高分子 / キャリアドーピング / 電子スピン共鳴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、電子スピン共鳴(ESR)法を用い、高結晶性のπ共役系分子材料を用いた薄膜トランジスタ(TFT)におけるキャリア観測を進め、以下の成果を得た。 1. 平面性の高いチエノチオフェン骨格を持ち、高移動度を示すC10-DNTTのTFTを作製し、素子特性測定とESR測定を極低温まで行った。ESR信号は極低温で顕著な角度依存性を示し、g値のDFT計算との比較から、C10-DNTTは分子長軸が基板に垂直に立つend-on配向をとることがわかった。また、グレイン内、及びグレイン間のキャリア運動に伴うESR線幅の尖鋭化を解析した結果、グレイン内では4 Kまでキャリアが運動することを見出した。一方で、グレイン間のキャリアホッピングも高温で顕著に起こり、その活性化エネルギーはTFT移動度の活性化エネルギーとよく一致した。この活性化エネルギーは約10 meVと小さく、TFTは4Kでも駆動が確認された。 2. 導電性高分子F8T2を用いたTFTにおいて、ゲート電圧印加に伴いしきい値電圧がシフトするゲートバイアスストレス効果の起源を、ESR法によるキャリアの直接観測に基づき調べた。SiO2絶縁膜を用いたボトムゲート型デバイスでは顕著なストレス効果が観測され、ESR信号はゲート電圧印加とともに減少した。このことから、ストレス効果をもたらすトラップ電荷がスピンを持たないことが示された。一方、100℃以上のアニール処理や、パリレン絶縁膜を用いたトップゲート型構造を用いるとストレス効果は顕著に減少した。これらの処置は水分子の吸着を防ぐ効果があり、トラップ電荷の起源が水分子から生成されたプロトンであるとする報告を支持する。一方で、スピン-電荷関係の測定から、スピンを持たないバイポーラロンの生成は見られず、バイポーラロンによるストレス効果は本系では起こらないことが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は現在順調に進展しており、インパクトの高い論文誌への成果掲載や、学会における招待講演を通じて国内外へ広く成果を発信すると共に、高い評価を受けている。特に、本年度はC10-DNTTのTFTにおいて、ESR線幅の詳細な解析に基づき薄膜の結晶グレイン内、及びグレイン間におけるキャリア運動を詳細に明らかにすることに成功した。その結果、π共役系の拡張や長鎖アルキル置換などの分子の化学修飾が輸送特性に及ぼす影響が明らかになるなど、顕著な成果につながった。さらに、ゲートバイアスストレス効果のESR研究は、ストレス効果をもたらすトラップ電荷の起源がプロトンであることをキャリアのミクロ観測に基づき裏付ける結果をもたらした。実際に、プロトンを除去/遮蔽したデバイスでは、駆動安定性の大幅な向上に成功している。これらの研究は、今後、有機FETの応用を加速する上で有意義な知見を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、前年度までの研究を継続すると共に、イオン液体ゲートトランジスタ構造を用いて有機材料により高濃度のキャリア蓄積を実現する研究を展開する。26年度に高移動度導電性高分子であるPBTTTを用いたイオン液体ゲートトランジスタを作製し、デバイスの低電圧駆動やキャリアのESR観測に成功しており、高濃度キャリア蓄積に伴うバイポーラロン形成などの電子状態の制御に成功しつつある。今年度は、チエノチオフェン系の高移動度低分子材料や、P3HT、さらに、近年注目されているドナー・アクセプタ(DA)型骨格を有する高移動度高分子材料を対象に、注入キャリアのESR観測を進める。 さらに、フッ化アルキルシラン(FTS)やF4-TCNQなどのアクセプタ性の強い分子を用いて上記の有機材料に高濃度の化学ドーピングを行い、バイポーラロン転移や金属転移などの電子状態の制御を目指す。この際、ドーパントに由来する分子配向の変化の有無をESR信号の角度依存性から明らかにすることで、特に結晶性の高いグレイン内で実現する電子状態の変化を選択的に解明する。
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Causes of Carryover |
26年度の研究、予算使用はおおむね順当に進んだが、当初見込んでいたシステムソースメータへの支出を高移動度分子材料や試薬、高純度ガス等の購入予算に振り替えたため、繰越額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、より高移動度のDA型高分子材料や低分子材料などの分子材料への予算費出を当初計画より増やし、より発展的に研究を展開して行く。
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Research Products
(12 results)