2016 Fiscal Year Research-status Report
メゾ・ナノスケール物質系の量子干渉と電子相関の競合に関する理論的研究
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26400319
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小栗 章 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10204166)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 物性理論 / 量子ドット / 近藤効果 / フェルミ流体 / 電子相関 / 電流ゆらぎ / 非平衡 / 国際情報協力 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度も,課題研究の主題であるメゾ・ナノスケール系における量子干渉と電子間相互作用の効果に関する研究を精力的に進めた.概要は次の通り: 1. カーボンナノチューブ量子ドットの近藤効果に関する研究成果を論文出版した.また,数値くりこみ群の計算のコードを拡張を行い,スペクトル関数およびコンダクタンスの温度依存性の計算を進めた.特に,コンダクタンスの温度変化に関する実験結果と比較から,磁場中のSU(4)からSU(2)近藤状態へのクロスオーバーに関して,有限温度においても実験と理論がよく整合することが分かった. 2. 量子トッドを超伝導体に接合系した系のスペクトル関数の振る舞いに焦点をあてた研究を行った.特に,スピンS=1/2の残った磁性基底状態では,斥力が超伝導ギャップより小さいパラメータ領域において2個の異なるアンドレーエフ束縛状態がギャップ内に現れ,Green関数は4個のピークを持つ.我々は,このようなパラメータ領域における励起スペクトル構造の詳細を明らかにし,この4ピーク構造がコンダクスび測定を通して観測しうることを物理学会で報告した. 3. 三角形に配列した量子ドットにおける軌道縮退を持つ近藤効果と超伝導の競合によって様々な特徴のことなる量子状態が実現しうる.我々は,超伝導効果と斥力が拮抗し,かつJosephson位相が0とπの中間領域において,三角形内で分極した近藤シングレット状態とクーパー対に起因するシングレット状態が,新しいクロスオーバーを通して移り変わることを見出し物理学会で報告した. 4. 近藤効果を起こす量子ドットの非線形応答電流および電流揺らぎに対する電子間相互作用による高次のFermi流体補正に関して微視的観点からの考察を進めた.特に,局在電子数が非整数である電子正孔非対称な場合にも適用可能な定式化を行った.論文執筆中.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1. カーボンナノチューブ量子ドットの近藤効果に関する研究では,昨年度まで基底状態の最も基本的な性質である局在電数および位相のずれ,準粒子のくりこみ因子,ウイルソン比に関する実験との比較をおこないフェルミi流体状態の詳細を理論的に調べてきた.今年度はそれに加え,有限温度の輸送特性および励起スペクトルを加えた数値解析が可能になり,より総合的な観点からの研究の遂行が可能になった. 2.超伝導-量子ドット接合系の研究においても,数値くりこみ群を用いたスペクトル関数計算を通して,アンドレーエフ束縛状態のパラメータ依存性の詳細や,近藤シングレットとクーパー対シングレット対の競合およびクロスオーバーおよび量子相転移の新たな側面を明らかにした. 3.多軌道系である3角形3重量子ドットにおいても軌道分極,電子相関,超伝導相関の競合の多様性の全貌がより明確になった. 4.近藤状態が実現されている量子ドットを流れる非平衡電流および電流ゆらぎを決める高次のフェルミ流体補正に関して,局在電子数が非整数である場合にも適用可能な定式化し,今後の発展につながる基礎づけを行った.
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Strategy for Future Research Activity |
1.カーボンナノチューブ量子ドットに関する研究では,電子間の相互作用に関して軌道内および軌道間のクーロン相互作用の効果に加え,谷間混成,スピン軌道相互作用,フント結合の影響も考慮に入れ,カーボンナノチューブにおける多彩な近藤効果の総合的かつ詳細な計算を,数値くりこみ群を用いて行う.また,SU(4)近藤効果の非平衡電流および非平衡電ゆらぎの計算を実行し,実験結果との総合的な検討を行う. 2.超伝導量子ドット接合系の研究,および3角形3重量子ドットに超伝導体を常伝導帯を接続した系の研究に関しては、これまでの成果を総括し論文にまとめる.これらの接合系は,実験的に制御可能な広いパラメータの空間において多彩多様な広がりがあるため,新たなパラメータ領域に関する研究も検討する. 3.非平衡近藤系の電子正孔非対称性な場合におけるフェルミ流体的振る舞いに関する詳細な検討を進める.
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Causes of Carryover |
先に別途購入できた計算機用のワークステーションが,本研究の遂行にも無理なく使用可能であったため.
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として,研究費および謝金に使用する.また,現状の計算機のリソースと数値計算の進行状況を見て計算機の購入も検討する.
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Research Products
(17 results)
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[Presentation] 近藤効果が発現する量子ドットにおける励起スペクトル2016
Author(s)
秦徳郎, Meydi Ferrier, , 荒川智紀, 小林研介, Raphaelle Delagrange, Richard Deblock, Helene Bouchiat, 阪野塁, 寺谷義道, 小栗章
Organizer
日本物理学会2016年秋季大会
Place of Presentation
金沢大学 角間キャンパス (石川県金沢市)
Year and Date
2016-09-13 – 2016-09-16
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