2014 Fiscal Year Research-status Report
半導体量子ドット集合系における超短パルス超蛍光の発生メカニズム
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26400320
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
宮島 顕祐 東京理科大学, 理学部, 講師 (20397764)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石川 陽 山梨大学, 総合研究部, 准教授 (10508807)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 超蛍光 / コヒーレンス / 量子ドット / 励起子分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、半導体量子ドット集合系での超蛍光において「超高速コヒーレンス生成」に起因する量子ドット特有の発生メカニズムを探求している。 本年度は、用いる試料であるNaCl単結晶中のCuCl量子ドット作製において、これまでより精密なサイズと濃度制御を目指して様々な作製条件を試行した。その結果、アニール温度と時間によって系統的にサイズ制御が可能であることは見出せたが、実験結果の試料依存性が大きく、量子ドットがより均一に作製される条件を模索する必要があることが分かった。一方で、これまで明確な報告例が無かったCuCl量子ドットのTEM像の観察に成功した。ドットの形状や平均サイズ、また超蛍光発生に重要な要素であるドット間距離について明らかにすることができるようになったのは大きな進捗である。さらに、XRD測定を行い、母体結晶NaClに結晶面を揃えてCuClが分散することを示す結果が得られた。 光学測定では、当初の計画では、自己位相変調を利用したスペクトル幅を連続的に変化されるユニットを作製する予定であった。しかし、レーザー光の安定性が悪かったことや、蒸留水を用いた自己位相変調において予想よりスペクトル幅が広がらず、ユニット作製には至らなかった。一方、新たに作製した量子ドット集合系において、超蛍光の励起密度依存性、温度依存性、励起長依存性の測定を行った。特に温度依存性では、これまで報告されている他の固体からの超蛍光と比較して最も高温で放出される超蛍光発生を観測した。これは、励起子系の輻射寿命が他の原子や分子の電子遷移の寿命より非常に短いことに起因すると考えられる。さらに、励起長依存性では、励起長増大に伴う超蛍光の短パルス化が観測され、コヒーレンス長が非常に長いことを示唆する結果が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
未だ試料の場所依存性が大きいことが主たる理由である。特に超蛍光の発生機構を明らかにする上では、高密度かつ均一に量子ドットが存在する試料を作製することで、研究は大きく進むと期待される。また、スペクトル幅可変ユニットについては、自己位相変調を安定して出せる方法を確立する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、試料作製の課題である高密度かつ均一な量子ドット作製については、これまではアニール温度と時間での制御を目指してきたが、その前段階でのブリッジマン法によるNaCl単結晶作製について改善を行っていく。具体的には、成長温度と速度の見直しを行い、特に成長速度を下げることで均一な試料が作製できることを期待している。試料評価はXRDによる母体結晶の結晶性評価、TEMによる量子ドットのサイズや形状・ドット密度の評価や母体結晶との格子面の配向、光学測定による非線形性の確認を行う。 光学測定では、光カーゲート法による発光の時間分解分光を行う。特に、ストライプ状に励起したときの励起長依存性については、超高速コヒーレンス形成のメカニズムを知る重要な実験となるので、再現性に注意しながら実験を進める。さらに、スペクトル幅可変ユニットの作製も同時進行で進める。今年度は蒸留水などの液体を持ちいた結果、光強度の安定性を欠いたため、本年度は固体物質(ガラスやフッ化カルシウムなど)で試行する予定である。もう一つ、光学実験では超蛍光発生の本質である、「超蛍光発生の量子揺らぎ」の観測を行いたい。具体的には、超蛍光の発光スペクトルを1パルス毎に測定し、その発生に量子揺らぎが関わっていることを確かめる。関わっているならば、1パルス毎にスペクトル幅が大きく変化することが期待され、その値から超蛍光発生機構でのコヒーレンス形成の速さを見積もることができると考えられる。 さらに、共同研究者との理論研究で、量子ドットが空間的に分布している場合での超蛍光の発生機構について明らかにする予定である。
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Causes of Carryover |
予定していたスペクトル幅可変ユニットの作製が進まなかったことが主たる理由である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
固体での自己位相変調を試行し、それに関連する光学部品(レンズ・フィルター・絞りなど)を年度の早い段階で購入する予定である。
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Research Products
(9 results)