2016 Fiscal Year Research-status Report
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26400322
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
水木 純一郎 関西学院大学, 理工学部, 教授 (90354977)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤田 全基 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (20303894)
町田 昌彦 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構, システム計算科学センター, 研究主席 (60360434)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 酸化物高温超伝導 / 中性子非弾性散乱 / X線非弾性散乱 / 格子振動 / 電子格子相互作用 / 鉄系超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年度は、J-PARCが再稼働し予定より遅く(2017年2月13日~18日)銅酸化物超伝導体の非弾性中性子散乱実験を行った。試料は、LSCO系では最高の超伝導転移温度を持つ組成の、[100]方向と[110]方向に進むCu-Oボンドストレッチ縦波光学格子振動の観測を行った。詳細な解析は進行中であるが、明らかにX線で観測した[100]方向の逆格子ベクトルQ=0.5の縦波光学格子振動からのスペクトル形状と中性子で観測したそれに違いが観測されている。これは予想していたように、このブランチの格子振動が電子との相互作用が異常に強いため、電子の動きを観るX線と原子核の動きを観る中性子で異なったスペクトル形状が観測されたと期待している。また、銅酸化物超伝導体に関して、(1)T’構造Pr1.4La0.6CuO4の磁気励起に対する還元アニールが、磁気モーメントの減少とスピン密度分布であることを明らかにした。(2)ホールドープ型銅酸化物高温超伝導体の磁気励起を高分解能で調べた結果、磁気揺らぎとフォノンの関わり方もエネルギー依存、あるいは、ホール濃度依存する可能性を示唆する結果を得た。 さらに2016年度は、同じ高温超伝導体と位置づけられている鉄系超伝導体の機構解明を目指し、FeSe系超伝導体で高圧誘起超伝導発現(SC-II相)に注目した実験を行った。方法は、X線非弾性散乱の中の鉄原子に注目した高圧下発光分光法とX線回折法で、これにより高圧下での電子状態、磁性状態、結晶構造を解析することができ、SC-II相発現機構を明らかにすることができた。本成果は、2016年8月のScientific Reportsに発表、プレス発表も行った。電子‐格子相互作用の強い系に対して理論的計算法を検討し、誘電関数の異常を示す波数及び振動数での情報を含む観測結果を酸化物高温超伝導体にて調べる必要性を提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
J-PARC施設のトラブルのため、J-PARCが長らく運転がされなかった。また、本科研費テーマの実験を予定していた中性子非弾性散乱用分光装置の心臓部であるチョッパーのトラブルがあり、実験が予定より遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
2016年度は、LSCO系オプティマムホールドープ超伝導体の格子振動を測定することができた。超伝導発現に電子格子相互作用が関与しているかどうか、実験的に確かめるためには、LSCO系で非超伝導体を対象とした去年度観測した同じ格子振動のドーピング依存性を中性子とX線でそれぞれ観測し、そのスペクトル形状を比較する必要がある。次年度はこの実験を行い、科研費テーマの完結を目指す。
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Causes of Carryover |
本科研費の中心となる実験は、J-PARCでの中性子非弾性散乱であったが、施設のトラブルのため、最終年度までJ-PARCが稼働されなかった。そのため、実験が大幅に遅れ、2017年2月に初めての実験をすることができた。しかし、本来の目的を達成するためには、銅酸化物超伝導体の格子振動のドーピング依存性を観測する必要があり、次年度もJ-PARCでの実験が必要である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016年度は、銅酸化物超伝導体LSCOのオプティマムドーピング試料の格子振動の観測を行った。次年度は、アンダードーピング、オーバードーピング試料の格子振動を観測するためにJ-PARCでの中性子非弾性散乱実験を行う。前期、後期、それぞれ1回(3泊4日)の実験を予定している。また、SPring-8での1回の非弾性X線散乱実験を計画する。それぞれのドーピング量を持つ純良単結晶の作製も行う。
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Research Products
(8 results)
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[Journal Article] Origin of pressure-induced superconducting phase in KxFe2-ySe2 studied by synchrotron x-ray diffraction and spectroscopy2016
Author(s)
Y. Yamamoto, H. Yamaoka, M. Tanaka, H. Okazaki, T. Ozaki, Y. Takano, J.-F. Lin, H. Fujita, T. Kagayama, K. Shimizu, N. Hiraoka, H. Ishii, Y.-F. Liao, K.-D. Tsuei, J. Mizuki
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Journal Title
Scientific Reports
Volume: 6
Pages: 30946-30952
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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[Journal Article] Pressure-induced phase transition in LaCo5 studied by x-ray emission spectroscopy, x-ray diffraction and density functional theory2016
Author(s)
H. Yamaoka, Y. Yamamoto, E. F. Schwier, N. Tsujii, M. Yoshida, Y. Ohta, H. Sakurai, J.-F. Lin, N. Hiraoka, H. Ishii, K.-D. Tsuei, M. Arita, K. Shimada, J. Mizuki
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Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 94
Pages: 165156(1-5)
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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