2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400324
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
西野 正理 独立行政法人物質・材料研究機構, 理論計算科学ユニット, 主幹研究員 (80391217)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮下 精二 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10143372)
末元 徹 東京大学, 物性研究所, 教授 (50134052)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 電子格子相互作用 / 相転移 / 臨界現象 / フラストレーション / 光誘起相転移 / 長距離相互作用 / 弾性相互作用 / 準安定状態 / 緩和過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
光誘起相転移を示すスピンクロスオーバー(SC)系においては、その状態変化の過程で、バイブロニックなカップリングを通して分子の構造変化と電子状態変化が連動するため、格子変形に伴う歪みにより弾性相互作用が生じるが、この弾性相互作用の性質は非自明であり、協力現象の発現に重要であることが分かっている。これまでの我々の研究で、格子と短距離相互作用の種類によって、弾性相互作用の協力的効果が大きく異なることが分かっている。今年度は、スピンクロスオーバー三角格子系に焦点を当て、短距離相互作用と格子自由度(弾性相互作用)の競合、協力にによる秩序化の性質について詳しく調べた。温度変化によってLow spin (LS) 相、High spin (HS) 相の二相共存線上を変化させた時に現れる臨界現象の解析を行った。Ising系に、LSとHSの分子の大きさの違いを考慮した弾性相互作用を導入してSC系のモデルを構築した。次近接相互作用をもつ反強磁性イジング三角格子系においては、double Kosterlitz-Thouless (KT) 転移が起こる事が知られているが、それに格子の自由度を加えたSC系のモデルにおいては、その弾性相互作用の実効的長距離相互作用としての効果のために、臨界現象の特徴が変化することを見いだした。弾性相互作用が比較的弱い場合は、KT相は存在し、その高温側において弾性相互作用の効果は現れずKT転移が起こるが、低温側では、弾性相互作用の効果によりKT転移とは異なる転移が起こることが明らかになった。そして、その相転移点では、新しいクラスの臨界現象が起こっている可能性を示した。このほか、3次元系の解析にも着手して研究を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
光スイッチングを示すスピンクロスオーバー(SC)系には、様々な結晶構造や格子を有するものがある。その中で、三角格子系に関する実験も行われているが、その場合、相互作用が強磁性様であり、Hish spin (HS)相かLow spin (LS)相のみが秩序相形成に関与する。三角格子系での反強磁性様な相互作用に関しては、実験、理論の研究は無く、その性質を明らかにすることは、SC系の新たな物性研究に重要であると考えられる。今回、我々は、その反強磁性様な相互作用がある系の理論的研究において重要な進展があり、これまで知られていない臨界現象を見いだした。HS相、LS相、LS-HS交替相が絡む相転移の性質は、これまで研究されてきているが、今回のフェリ様相が絡む相転移の性質が明らかになったことで、SC系の光誘起現象や相転移研究の新たな展開が期待できる。 また、弾性相互作用の実効的長距離性の発現の機構は、格子の対称性や同時に存在する短距離相互作用の種類に大きく依存して変わることが、我々の研究で明らかになってきた。それに加え、新しい臨界現象を示したことは、統計力学における相転移・臨界現象の基礎研究においても重要である。研究計画に示した3次元系へのシミュレーション手法の拡張には着手しており、いくつかの系で試験している。また、我々が開発した、スピン状態変化と格子緩和のタイムスケールの差を考慮したハイブリッド法も、光誘起現象への適用へ向けて改良を行っている。上記の研究、開発は、実験と協力して行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、3次元系の諸物性に関する理論解析も進める。そのため、シミュレーション手法やプログラムの改善、拡張を行う。光誘起現象を示すスピンクロスオーバー系の静的、動的性質について明らかにする。相転移や臨界現象の性質、相図について解析し、新しい相転移や臨界現象の可能性について調べる。光誘起現象における格子歪みのダイナミクスを調べるために、我々が開発してきたハイブリッド法に光励起プロセスを導入して、光励起とその直後のスピン状態の秩序変数 (HS fraction)および格子変形の時間依存性を解析できるように開発する。そして、elastic stepなどの機構について考察し、光誘起協力現象における格子歪みのダイナミクスと構造変化や相変化などのマクロに現れる諸物性の関係を明らかにする。さらに光照射による核生成やドメイン形成のダイナミクスの広い時間スケールでの特徴を明らかにして、それを光学応答など、実験的に検証する方法の考案を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は計算機の増設を予定していたが、手持ちの計算機で計画が進んだこと、 次年度にパフォーマンスを増強した計算機が入手可能になることなどにより、購入を見送ることにした。また予定していた出張の中止等により、未使用額が発生した。 次年度に使用する予定である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として計算機増設(メモリ、ハードディスク等を含む)および消耗品購入のために 次年度分と合わせて使用予定である。
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Research Products
(15 results)