2015 Fiscal Year Research-status Report
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26400344
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
柴田 尚和 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40302385)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 量子スピン系 / フラストレート / 磁場誘起相転移 / 量子多体効果 / カイラリティー液体 / 密度行列繰り込み群 / 残留エントロピー |
Outline of Annual Research Achievements |
二次元量子多体系として知られる分数量子ホール系では、磁場中の一電子状態のマクロな縮退がクーロン相互作用によって解かれることで多体効果を強く反映した基底状態が現れる。一方、フラストレート量子スピン系では、フラストレーションの効果によって生じる古典的な基底状態のマクロな縮退が、量子効果によって解かれることで、量子効果を反映した多彩な電子状態が実現する。本年度は、低次元フラストレート量子スピン系の典型である、捻れた三角スピンチューブの基底状態の磁場中相図を決定し、さらに、厳密解が存在する一群のフラストレート量子スピン系の励起ギャップおよび残留エントロピーの存在を明らかにした。
三角スピンチューブには、三角形の格子構造と反強磁性的な相互作用によりフラストレーションが内在し、1つの三角形のユニットに対してスピンとカイラリティーの4重の縮退が基底状態に現れる。本研究では、この縮退が隣接する三角形のスピンとカイラリティーの自由度と相互作用することで解かれ、スピン液体、及び、カイラリティー液体を含む9種類の量子状態が磁場と相互作用の強さに応じて現れることを示した。また、ダイヤモンド型のユニット構造によって作られる一群の格子構造をもつハイゼンベルグ型の量子スピン系の厳密な基底状態と励起構造、および、その系に特徴的なマクロな残留エントロピーの存在を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新しい量子多体状態の探索は、本研究課題の主要な目的であるが、フラストレーションの効果によって生じるカイラリティー自由度とスピンの自由度が絡み合うことで生じる多自由度系における量子多体状態を、エネルギースケールを空間変調させる新しい計算法を用いて明らかにし、そこに新しい電子状態を発見できたことは、評価できる成果と考えられる。また、量子多体状態の新しい特徴として、マクロな残留エントロピーが存在することをフラストレーションがある一群の量子スピン系に対して厳密に示すことができたことも、量子多体状態の多様性を理解する上で価値があると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の計画としては、まず分数量子ホール系において実験的にその存在が確かめられ、その特徴が明らかになりつつあるグラフェンにおけるラフリン状態および非偏極分数量子ホール状態の検証を行い、さらに、重い電子系や量子スピン系における基底状態と有限温度の計算を行うことで、さらなる新しい量子多体状態の発見を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度の後期において一部研究成果のまとめを前倒して行うことができた。そのため、次年度に行う新たな数値計算のためのCPUの購入を、次年度に出荷される性能の良い次期CPUの購入に切り替えることが可能になった。高性能のCPUの使用による次年度の研究の効率化のため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
インテル製の次期CPUが出荷され次第、その購入費として使用する。
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