2015 Fiscal Year Research-status Report
多バンド超伝導体バルク・表面・接合におけるヒッグス・モード
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26400346
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小山 富男 東北大学, 金属材料研究所, 研究教育支援員 (30153696)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 多バンド超伝導体 / 集団励起モード / ヒッグスモード |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、多バンド超伝導体のギャップモードの摂動計算に関して理論的研究を行った。超伝導ギャップモードは、振幅モードと位相モードに分離されるが、本研究では、これらの集団モードを同一の近似の下で系統的に計算する摂動論の構築を行った。特に、系が複素ギャップを持つ場合の摂動計算の手法を確立したことは大きな成果と言える。この摂動理論において、2粒子セクターにおける摂動級数は、ワード・高橋恒等式を満たすことも証明した。3つ以上のバンドからなる多バンド超伝導体系では、バンド間の対相互作用がフラストレートしている場合、時間反転対称性の破れた状態(TRSB状態)が出現することが知られている。TRSB状態におけるギャップモードに対する我々の摂動理論では、通常の位相・振幅モードのほかに、位相と振幅が結合した新しい集団励起モードが存在することを予言する。さらに、これらの集団モードのスペクトル構造も明らかにした。以上の研究成果は、国際会議ISS2015で発表した。また、日本物理学会の論文誌 J. Phys. Soc.Jpn. に現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多バンド超伝導体系では、時間反転対称性の破れが起こり得ることが知られているが、この状態でのギャップモードの系統的な計算法はこれまで確立していなかった。本研究2年度で、摂動論的手法によりこのモードを計算する方法を完全に確立した点で成果を上げることができたと考える。研究の完成度を高めるため、論文の作成に時間をかけたことにより論文の出版が少々遅れている点はあるが、おおむね順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、最終年度であるのでこれまでの研究成果をまとめ、学会や国際会議等において成果の宣伝に努めたい。また、次のテーマにも新たに取り組みたい。 (1)多バンド超伝導体の集団モードの検出方法の確立。 (2)時間反転対称性の破れた状態でのロンドン理論の拡張。これにより渦糸状態における新奇な現象を探索する。
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Causes of Carryover |
年度後半に投稿した論文の出版が次年度にずれ込んだため、その掲載費に充てる予定の経費が浮いたことにより、余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
この予算は、当初の予定通りこの論文の掲載費として使う。
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Research Products
(2 results)