2016 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
26400354
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
樋口 雅彦 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (10292202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 克彦 広島大学, 先端物質科学研究科, 准教授 (20325145)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 粒子数揺らぎ / 超伝導 / 対密度汎関数理論 / 変分原理 / エントロピー / 運動エネルギー |
Outline of Annual Research Achievements |
27年度に開発した「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の有効性を確認するために、28年度は数値計算可能なスキームにまで具体化をした(研究目的3に相当)。具体化された計算スキームは次の2つの特徴を有している: (1)粒子数揺らぎを予言するためには、対密度と電子密度が粒子数が一定でない状態から構成されなければならない。対密度汎関数理論におけるこれら物理量の探索には、常伝導状態出の探索とは異なる工夫が必要となる。今回我々は、常伝導状態を変形することで超伝導状態を近似する「ド・ジャンによる近似法」を採用し、対密度と電子密度の探索範囲の工夫を行った。含まれる変分パラメータは一つで、BCS理論におけるギャップに相当する物理量である。 (2)「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の数値計算を実行するために克服すべきもう一つの課題は、グランドポテンシャル汎関数に含まれる運動エネルギー汎関数とエントロピー汎関数の具体的な表式である。運動エネルギー汎関数については、0[K]の対密度汎関数理論ですでに我々は開発済みであり[Phys. Rev. A. 90, pp. 062511/1-12 (2014)]、これを利用できる。エントロピー汎関数に関しては、そこに含まれるエネルギースペクトルにギャップ構造を持たせ、さらにその具体的な形が対密度の汎関数で近似的に書けることを利用した。 これらの研究成果は、29年度に行われる国際会議においても講演予定(招待講演)である。 さらに28年度は、上記の対密度汎関数理論とは異なる第一原理理論「磁場下超伝導のための電流密度汎関数理論」の開発でも前進があった。後者の理論は本研究課題では挙げなかった研究テーマであるが、基本変数の探索範囲の問題など具体的な計算スキームで共通する問題点も多いため、同時に研究が前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、昨年度(平成27年度)の成果をさらに発展させて、具体的な計算スキームを完成させた(研究目的3に相当)。次年度に本理論(「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」)の有効性の実証が十分にのぞめる。さらに今年度は、研究課題には挙げなかった「磁場下超伝導のための電流密度汎関数理論」の開発でも前進があった。この成果も学術論文の形にまとめ現在投稿中である。以上より、28年度の研究実施計画はおおむね達成したと判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策を課題ごとに箇条書きにする: (1)「粒子数揺らぎを予言する対密度汎関数理論」の数値計算を始める(研究目的3)。粒子数揺らぎを予言するための対密度の探索範囲については、BCS理論におけるギャップに相当する物理量を変分パラメータとして、「ド・ジャンによる近似法」による電子密度と対密度の表式を変動させる。この一つの変分パラメータで、粒子数揺らぎの探索範囲が十分にカバーされている保証はない。試行錯誤的に行うしかなく、場合によってはギャップの異方性に相当する複数パラメータを必要とするかもしれない。運動エネルギー汎関数とエントロピー汎関数についてもすでに開発済みのもの(エントロピーについては28年度に開発済み)が使える。本数値計算によって、超伝導転移温度の定量的見積りのみならず、対密度自身が再現されるのであるから、超伝導体中の電子同士の相関の諸様相の解明も期待される。 (2)重い電子系への適用(研究目的2)については次のように推進する。我々は以前、対密度汎関数理論の対密度の探索範囲の有効な拡大を目指した「ジャストロー関数を用いた対密度汎関数理論」を提案した[Phys. Rev. A 75, pp. 042510/1-4.]。この理論自身は0[K]の理論であるが、これに、平成26年度に完成している有限温度の対密度汎関数理論(研究目的1)を適用し「有限温度のジャストロー関数を用いた対密度汎関数理論」を構築する。ジャストロー関数を用いた対密度は、軌道部分はLDAやPBEなどを使った既知の軌道で固定をして、ジャストロー関数部分を変分することにより最適化する方針である。通常金属と重い電子系で、最適化されたジャストロー関数が大きく異なることが示せれば、電子相関の定量的な記述が対密度汎関数理論で実現できたことになる。29年度はその実証を目指す。
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Causes of Carryover |
28年度に購入予定の消耗品が入手不可能であったため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
29年度は数値計算を実行する。そのための計算機関連の消耗品を購入予定である。次年度使用額は平成29年度請求額と合わせて以上の計画に使用する。
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Research Products
(7 results)