2014 Fiscal Year Research-status Report
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26400357
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
草部 浩一 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (10262164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸山 勲 福岡工業大学, 情報工学部, 准教授 (20422339)
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Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 強相関電子系 / 強相関エレクトロニクス / 計算物理 / 超伝導材料・素子 / 磁性 |
Outline of Annual Research Achievements |
超過程を自己無撞着計算理論から導く厳密な理論を構築した。一意接続定理に基づいて逆写像定理を与え、厳密解に接続される有効モデル系列を発生させる。この理論が、極限模型を与えることの厳密証明を公開した。同時に、コヒーレント状態経路積分と連結クラスター展開を元にして、有効多体模型の一般形を凝縮系理論の標準模型として定めた。この表現に現れるダイソン方程式は、定義空間サイズと比較して必要となるレゾルベント定義にその表現空間サイズの減少を示すことから、解法手続きに可算有限性をもつ数値解法は全て原理的に応用可能である。そこで、連続自由度をもつ多体系に対する数値解法が定義可能となった。さらに、量子電磁力学における相互作用電子系の表現を、共変光子グリーン関数を電子間相互作用核に導入して定めることが出来る。これによって、定常多体系の表現理論が標準模型という位置付けで与えられた。水銀系銅酸化物高温超伝導体の元素置換による超伝導転移温度上昇機構の解明を目指し、カドミウム置換系を含む多層系銅酸化物高温超伝導体の理論評価を進めた。物質パラメータを変動させる元素置換、圧力効果を想定して、フェルミ面形状因子と3d軌道間エネルギー準位差を指標として用いる評価に加えて、クーパーペアの2体クーロン相互作用起源層間ペアホッピング超過程を想定して解析した。その結果、水銀系からのカドミウム全置換系でも水銀系やタリウム系に匹敵する高い超伝導転移温度が期待できることが分かってきた。遷移金属酸化物ばかりでなく広く強相関電子磁性体において見出される磁気秩序とドーピング効果を解明するため、超交換相互作用などの超過程を評価する磁気相互作用決定アルゴリズムを開発した。高速計算プログラムを作成して、磁性不純物系に適用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
超過程評価法の整備を、基礎論開発と応用プログラム開発の両面で進め、適用事例の積み重ねにより、研究進展を図った。結果として、グラフェン水素欠陥系を例にした擬ギャップ近藤効果における強い低エネルギー反強磁性磁気相互作用を発見した。この系では、従来荷電中性条件においては近藤効果がむしろ消失する可能性が言われてきたが、超過程の評価を新たに定義して行った結果、0.1eVに至る強い相互作用強度を見出した。この相互作用に起因する近藤効果を考える上での新しい有効モデルの提案を行った。この結果からは、磁気遮蔽発生後のディラック伝導系における繰り込み効果が結論された。遷移金属磁性体では、多様な磁気秩序発生の起源に相対論効果がある。近年の強相関電子系での実験成果から、このミクロなスケールで運動発生する磁性体の光応答には、強い非局所性、強い相関効果が見出されている。そこで、一般の磁性体に対応できる形式に相互作用核から見直す方法論整備を図った。量子電磁力学(QED)に立脚する多配置参照密度汎関数法の整備の結果として、超過程評価法を与えるモデル汎関数の設定方法にはQEDの正則化法による発散除去相当の効果があることが分かってきた。さらに、物質の定常状態決定法を強相関電子系に対して与えることができる我々の方法は、定常状態をQED真空として与えることにより相互作用場の理論を自然に発生させることが出来る能力もあることが分かってきた。これらの成果は全て計画時点では必ずしも想定していなかった成果である。そこで、今年度の研究成果は、当初計画以上の進展を見せたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
標準模型に対する数値解法として、クラスター動的平均場近似法(CDMFT)、変分クラスター近似法(VCA)、バーテックス補正した揺らぎ交換近似などの方法を用いて、相関効果を発生する表現空間の解法を構築して、超過程を表現するグリーン関数の自己無撞着決定法を与える。 異常に高い転移温度をもつ層状超伝導体として知られる各種の超伝導体に対して、超過程解析を用いた評価を行う。銅酸化物に続いて、鉄系、IV族(Ti, Zr, Hf)MNX系、2p系(MgB2, グラファイト層間化合物)等の2次元電子系利用について、各種超過程の評価を進める。鉄系超伝導では、A空間内の直接散乱過程と超過程から、どのようなバンド間散乱を発生しているのかを追跡する。また、強結合超伝導理論からは説明困難な高い転移温度が実測されて注目されている、α相MNX系超伝導体について、その構造同定と超伝導メカニズム同定を進める。この成果は、有機系超伝導体合成の新たな契機を与えるものとしても、インパクトが高いものになると予想される。 軌道・スピン・電荷秩序を形成するマンガン系酸化物の磁気特性の理論決定を行う。磁気構造の決定とは、四元電流密度(電荷・スピン・電流密度)分布の決定でもある。そこで、マンガン系酸化物の磁気秩序決定を行って、物質中の電子状態を定める試金石となる計算を実施する。その結果は、従来のspin-GGA等の密度汎関数法をベースにした平均場近似の適用限界を明瞭にすることにも繋がることが期待される。併せて、Kanamori-Goodenough則などの超交換相互作用に関する議論に関連して、マンガン系酸化物の計算結果において超過程を評価することで、我々の収束電子状態計算によればこの局在磁性評価が可能であることを示す。そして、スピン・電荷・軌道の複合秩序が形成されるマンガン系酸化物の電子状態解明を進める。
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Causes of Carryover |
投稿論文の掲載決定まで時間を要したため、論文投稿時に必要と予定された印刷費用を年度内執行に至らなかったためである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
投稿論文の掲載決定後に印刷費用として用いる。
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Research Products
(14 results)