2014 Fiscal Year Research-status Report
多成分、多バンド超伝導、超流動体における新奇物質相の理論的探求
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26400360
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| Research Institution | Okayama University |
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Principal Investigator |
町田 一成 岡山大学, 自然科学研究科, 名誉教授 (50025491)
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| Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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| Keywords | 重い電子系 / 超伝導体 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
重い電子系超伝導体の対称性同定の理論的、実験的な研究を遂行した。CeCu2Si2とUBe13は重い電子系超伝導体の典型物質である。1980年前後の発見されて以来数多くの研究が積み重ねられてきたが未だに超伝導のクーパー対の対称性についての確定した解答は存在していない。当課題の下でこの問題に実験グループの協力の下で理論サイドから取り組み、両物質の対称性についての絞り込みに成功した。
両物質の極低温の比熱測定によって従来から言われていた温度の冪則よりもさらに低温サイドに指数関数則の従う振舞いを見出した。この系に磁場を印可して電子比熱係数を調べた。その結果ギャップノードに特有のHの0.5乗則は観測されずにH線形則が発見された。これら二つの実験事実からこの超伝導体は共に複数のフルギャップをもつ多バンド超伝導体の対称性をもつことがわかった。同時にこの線形則の延長線から予測されるHc2は実際のそれよりもはるかに大きくこの超伝導体はパウリ常磁性効果によって強く抑制されていることがわかった。
以上の実験事実を踏まえて、多バンド性とパウリ常磁性効果を考慮したモデルを構築した。幾つかの場合分けの中で興味深い場合として、Hc2の内側に本来ならば、Hc2での一次転移を導くパラメーター域に一次転移の残存としてのクロスオーバー現象が隠れていることを見出した。この特徴的な磁場において電子比熱係数は急速な磁場変化を見せ、磁化は極小を示すことがわかった。これらの理論予想はCeCu2Si2とUBe13で見られたものとよく呼応し、これらの超伝導体が多バンド性とパウリ常磁性効果によって特徴づけられる系であることを示している。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述の実績に記したように重い電子系超伝導体の代表物質であるCeCu2Si2とUBe13の対の対称性を同定することに成功した。この課題は発見されて以来３０年以上にも渡っての懸案事項であり、その成果はこの分野にとって重要なインパクトを有していると考えることができる。一つにはこれら強相関物質においてはフルギャップをもつ超伝導体は存在せず、d波超伝導対称性が当然のものとして受け入れられてきた。その背景で対の形成機構がいろいろと議論されてきたが、そうした一連の常識を打ち破る結果である。
多バンド性とパウリ常磁性効果を同時に考慮した微視的な理論体系は今まで存在していなかった。当該課題の下でこの未開拓な分野への一歩を踏み出すことができたと言える。
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| Strategy for Future Research Activity |
以上の研究の進展を踏まえての今後の課題は、この定式化の成果を各種の超伝導体に適用して、いままでに未解決であった諸問題を解明すると同時に、定式化自体も更に深化させる必要がある。
ターゲットとなる物質としては当面の問題としてはSr2RuO4とKFe2As2がある。共に多バンド性とパウリ常磁性効果が重要であることはよく知られている。しかし、いままでのところ有効な理論手段が欠けていたのでいくつもの謎が未解決のままになっている。次年度以降これらの物質を開発した定式によって俎上に乗せて見たいと考えている。
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| Causes of Carryover |
出費を計画していた計算機購入のための物品費が年度以降に持ち越しとなった。これは計画していた数値計算が思いの外、手持ちの計算機で充当できたことによる。
また、外国旅行の費用も参加すべき国際会議等が当年度においてはなかったので、来年度以降に持ち越しとなった。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降においては、元来の計画に従って、物品費、旅費を使用する予定である。
特に計算機を次年度には購入して計算環境を整えることを考えている。
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Research Products
(2 results)
