2014 Fiscal Year Research-status Report
ゲージ場が創成する冷却原子気体の量子ダイナミクスの解明
Project/Area Number |
26400371
|
Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
笠松 健一 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70413763)
|
Project Period (FY) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 冷却原子 / ボースアインシュタイン凝縮 / 量子シミュレーション / 格子ゲージ理論 / 光格子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は光格子中の原子気体を用いた格子ゲージ理論の量子シミュレーションの提案およびその実装に関して、具体的な実験的提案を含めた詳細な解析を行った。 原子系が格子ゲージ理論のシミュレータとして機能するためには、局所ゲージ対称性を保ち、電場に対応する密度揺らぎの拘束条件としてガウス則を満たす必要があるために、系のパラメータに強い制約がかかる。したがって、その制約を満たすためには原子系の巧妙はデザインやセッティングが必要となる。我々は現状の実験技術を踏まえ、実現可能な2つのモデルを提案した。一つは光格子の励起バンドに凝縮した原子を利用する方法、もう一つは3層の2次元光格子系を用意し、層間の原子間相互作用を媒介として、層内の原子間相互作用をチューニングする方法である。 さらに実験での観測を指標として、原子系の量子シミュレーターの実時間発展を平均場近似の下で解析を行った。運動方程式はグロス-ピタエフスキー方程式と呼ばれるボース凝縮体の運動を記述する方程式を用いた。モンテカルロシミュレーションの解析によると、2次元原子系の量子シミュレーターは閉じ込め相とヒッグス相が安定な相として実現する。我々はグロスピタエフスキー方程式がこれらの相の動的な特徴を平均場の枠内でもとらえる事ができる事を示した。量子揺らぎを含めた格子ゲージ理論の実時間発展は理論的には困難な問題であるが、平均場のグロスピタエフスキー方程式は格子ゲージ理論の定性的な側面の記述に役立つことが示された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
格子ゲージ理論の量子シミュレーションに関する研究を論文にするにあたり、当初の予想よりかなり詳細な点まで詰める必要が生じたため、投稿までにかなり時間を要してしまった。このため予定していた人工ゲージ場中の原子系の実時間発展に関する解析を十分に進める事ができなった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は近畿大学の在外研究のために1年間、ハノーファー大学(ドイツ)に滞在する事になる。業務のほぼ100%を研究に費やせるために、この年度で予定した研究を可能な限り進展させる予定である。
|
Causes of Carryover |
2015年3月のアメリカ物理学会(APS March meeting 2015)出張期間を諸事情により短縮したこと、および、現在投稿中の論文の査読が長引いており、この投稿料にあてていた分がまだ支払われていないためである。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
論文の投稿料は受理が決定後速やかに支払う予定である。また本研究課題2年目にあたる2015年度の配分額は少し少なくなるために、旅費等で十分に執行できると予定している。
|
Research Products
(7 results)